「H・クリントン国務長官イラン国内混乱を語る」

2011年10月27日

 アメリカでサウジアラビア大使の暗殺計画が暴露されて以来、アメリカとイランとの間には、新たな緊張関係が生まれているようだ。当然のことながら、これはアメリカをしてイランとの間で、直接の交渉を必要としている。

 しかし、アメリカがイラン側と連絡を取ろうとしても、どうもスムーズにはいっていないようだ。このためヒラリー・クリントン国務長官は、イランの権力内部で、何らかの問題が発生している、と推測し始めている。

 彼女の推測では、権力内部で問題が発生しているために、たとえばサウジアラビア大使暗殺のようなことが、誰の命令で行われているのか、確認のしようがないということだ。

 彼女の表現では、軍部が再度力を持ち始めてきているのではないか、ということになるが、その軍部とはどの軍部なのか、彼女の発言からは不明だ。イランにはいわゆる国軍といわれる、イラン軍が存在する以外に、革命防衛隊という軍隊が存在している。

 現段階で表面的には、革命防衛隊はハメネイ師に帰属しているとされているが、革命防衛隊の予算はアハマド・ネジャド大統領の判断で決まろうから、彼もまた応分の影響力を持っている、と考えるべきではないか。

 つい最近、イランからは巨額の資金汚職のニュースが流れてきて、それがアハマド・ネジャド大統領と間接的ではあれ、関係があったとされていた。最近になって、このことを調べるべくイランの国会議員が、アハマド・ネジャド大統領査問会議を、開催することを要求した。

 しかし、途中でハメネイ師が内部分裂すべきではない、という内容の発言をしたところ、当初100人いた査問会議開催要求者が、69人に減り開催に最低必要な71人に満たなかったために、取り止めになっている。

 しかし、この事実はアハマド・ネジャド大統領をして、震撼させたことであろう。この結果、ハメネイ師はアハマド・ネジャド大統領に、貸しを作ったことになり、ハメネイ師の影響力がイラン政治の中で、増すことは予測できる。

 ただ、ヒラリー・クリントン国務長官が口にした、イラン軍部という表現が革命防衛隊ではなく、イラン国軍である場合は、話は全く変わってこよう。一国の中に二つ以上の軍隊を有するということは、外部から観察する場合、極めて困難なものにさせられる。

 現段階では、それが革命防衛隊であるか、あるいはイラン軍であるのかは別にして、いずれもハメネイ師あるいはアハマド・ネジャド大統領の、指揮によって動いている、と考えるのが妥当ではないか。そのこととは別に、イラン国内で混乱が、始まったことは事実であろう。