毎日書いていると、以前にどんなことを書いたのか、あるいは書かずに頭の中だけで考えをめぐらせていたのか、混同してしまう。確か以前に、スルタン皇太子が余命いくばくも無く、その後にはナーイフ殿下が、皇太子の後継に就任し、やがて彼はサウジアラビアの国王に就任するだろう、と書いたような気がする。
そのなかで、スルタン国王よりも6~7歳年上のアブドッラー国王は、スルタン皇太子が死亡すれば、相当落胆し、死期が早まるのではないか、とも書いたような気がする。そして、アブドッラー国王の国民の間での人気が、実はサウジアラビア国内安定の要だ、とも書いたような気がする。
さて、スルタン皇太子の死を受け、後継の皇太子に就任することが、ほぼ確実なナーイフ殿下とは、どのような人物なのであろうか。彼はサウジアラビア王家の中でも、有力なスデイリ家の出身で、1933年にターイフ市で生まれている。現在78歳と高齢だ。
彼は故ファハド国王の信望が厚く、20歳でリヤドの知事に任命され、1970年には副大臣に、そしてその5年後には大臣に昇格している。つまり、サウジアラビアの王家の中でも、なかなかの切れ者ということであろう。
彼は現実主義者だと言われ、これまで何度もサウジアラビア国内で起こった危機を、救ってきている。2003年、2006年の流血事件などがその代表格だ。つまり、テロに対してはあくまでも、力の対応を断行して来たということだ。
彼はサウジアラビア国内で活動していたアルカーイダのメンバーを、徹底的に掃討し、遂にはイエメンに追放することに成功している。その追放されたアルカーイダのメンバーが、イエメンで結成したのが、『アラビア半島のアルカーイダ』組織なのだ。
こうした手法からも分かるように、ナーイフ殿下は極めて保守的な、考えの持ち主でもあるようだ。例えば諮問会議の議員指名については、あくまでも国王による指名がいいとし、選挙による選出を支持しない考えだし、女性の参画についても、認めたくない意向のようだ。
サウジアラビアが開かれてきている中では、折々問題視される宗教警察(ムタッワー)について、彼は高く評価している。当然、彼が皇太子に就任すれば、彼と同じ考えの人物を内相に推薦することが予想される。つまり、単純に考えると、保守派の幹部が一人増える、ということであろう。
サウジアラビアはナーイフ皇太子の指揮の下に、アラブの春対応を進めるであろうが、それは力によるものであり、国民対話によるものではないだろう。そうなった場合、サウジアラビアの開明派のインテリたちは、どう動くのであろうか。どうやら、サウジアラビアの内政は混乱に満ちた、新時代を迎えたようだ。