昨夜帰宅してパソコンを開くと、カダフィ大佐死亡のニュースが流れていた。血だらけのカダフィ大佐が、どうも小突かれたり蹴飛ばされているようだ。そしてのちに流れた情報によれば、彼は顔や足に負傷し出血多量の中で、暴力を受け移送中に死亡したようだ。
考えてみれば、彼にとっては戦い続けて死ねたことは、本望かも知れない。彼が徹底抗戦を叫んだ挙句に、国外逃亡を図ったのでは、絵にならない。あくまでも欧米の植民地主義に抵抗して、死んで行くところに、革命家カダフィ大佐の、真骨頂があるのではなかろうか。
そうは言っても、最終段階での彼の心境は、それほど恰好のいいものではなかったろう。信じていたほとんどの国民に、背を向けられ、自慢の息子は殺されたり、父親を捨てて逃亡したり、という散々な状況だったからだ。
さて、カダフィ大佐の死は、リビアをこれまでのカダフィ統治の、42年とは全く異なる方向に、向けていくものと思われる。今回の革命に当初から関与していた、イギリス、フランス、アメリカは出来るだけ早く、その投資資金を回収したい、と思うであろう。軍用機による8000回にも及ぶ空爆と、20000回にも及ぶ発進の代金は、決して安くはなかろう。
そうなると、イギリス、フランス、アメリカ各国は、1日も早いリビア復興に手を出したい、ということであろう。そのためには、これまで匿っていた亡命リビア人を、閣僚ポストに就かせ、傀儡にすることを考えよう。
新体制は1日も早い選挙の実施と、正式な新政府の結成を迫られよう。それはベンガジから本部を移し、30日以内に臨時政府を設立することに始まり、240日以内には、200人からの議会議員選出のための、選挙を実施しなければならないということだ。
その議会選挙の後には、正式な内閣、新首相などが決まって行こうが、相当難行となろう。それは帰国組のリビア人と、在留リビア人、イスラム主義者と世俗主義者、各部族の利害が絡み、その上にイギリス、フランス、アメリカ、イタリアなどの意向が介入してくるからだ。
リビアの新体制がこの作業に遅れれば、イギリス、アメリカ、フランスが、圧力をかけてくることは必定であろう。加えて、リビア国民は1日も早い革命の果実を、手にしたいと思っていよう。そうなると、そのすべてに新体制は応えなければならない、ということだ。
さて、この厳しい作業を臨時のリビア代表者となっている、ムスタファ・アブドッジャリール氏は受けて、大統領に就任するのであろうか。あるいは彼が降りて、異なる人物が就任するのであろうか。その場合、その人物はリビア国民の多数に、支持されうるのであろうか。つまり、リビアの困難な問題は、これから始まるということだ。