リビア情勢は櫛の歯が欠けるように、カダフィの拠点が落とされていっている。それと共に、カダフィ大佐の家族は外国の亡命し、あるいは戦死している。つまり、カダフィ大佐の最後が、既に見えた感じがする昨今だ。
そうした中で、意外な声明がカダフィ大佐の最も信を置く子息、サイフルイスラーム氏によって発せられた。彼はリビア臨時政府(NTC)の要人と、NATO関係者を人質に取るよう、呼び掛けたのだ。
人質作戦であれば、それほど大規模な形でなくても、実行出来るというのが、彼の提案理由のようだ。人質を取れば有利な交渉も、可能だと考えてのことだ。
さてこのサイフルイスラーム氏の呼び掛けた、人質作戦が実際に実行されるのであろうか?その能力をカダフィ支持派が未だに、持っているのであろうか、ということを考えてみる必要があろう。
カダフィ派が不利になり、追い込まれた拠点は、彼の出身地に近いシルテ市、バニワリード市、セブハ市などだったが、シルテでは今でも猛烈な戦闘が続いており、一昨日にはNTC側の兵士10人以上が戦死し、50人以上が負傷したと、病院関係者が発表している。
カダフィ支持派の狙撃手による攻撃、RPGを使った攻撃は、それなりの成果を挙げているようだ。そうは言っても、大分追い込まれ、シルテ市では通りを挟んだ戦闘にまで、規模が縮小しているともことだ。
一方、首都のトリポリ市では時折、カダフィ支持派が小型自動車に乗り込み、NTC側を襲撃しそれなりの成果を、挙げていると報告され、NTC側には内輪もめが起こっているという、情報が流れている。
つまり、ここまで来て今なお、カダフィ派の反撃の余地が残されている、ということであろう。その裏には、新体制のリビア国民に対する、サービスがいまだに始まっていない、という不満があるのではないか。
以前に指摘したように、リビア国民のほとんどは、今回の革命騒ぎに無関心であり、戦闘に巻き込まれていったのは、個人的な利害と家族を守るため、であったと思われる。それが一定期間内に成果を収め、民生が復活しないと、新体制側はリビア国民の支持を、失いかねない不安があろう。
リビアはもともと豊かな国であり、カダフィ体制に不満はあっても、殺し合いをし、町が廃墟になるほどのレベルではなかったはずだ。
サイフルイスラーム氏がこの時期に、NTC側の要人人質作戦を呼びかけたことは、リビア国民のNTC,に対する不満が、出始めたのを狙ってのことではないかと思われる。その成果が表れるか否かは、アッラーの知るところだが。