「表面化してきたハメネイとA・ネジャドの対立」

2011年10月17日

 以前から指摘してきたことだが、イランの体制の二本柱である、宗教権威者のハメネイ師と、アハマド・ネジャド大統領との対立が、表面化してきている。

 この両者の対立が明らかになったのは、アハマド・ネジャド大統領の義兄弟が、大統領顧問として就任したが、彼が金融スキャンダルに絡んでいたことが、露見してからだ。

 このイラン歴史上始まって以来の、巨額に上る金融事件は、関係者の複数がすでに、カナダなどに逃れている。当然のこととして、これはアハマド・ネジャド大統領にも、関係する事件だ。

 この問題が表ざたになり、イラン国内で大問題になった裏には、アハマド・ネジャド大統領とハメネイ師との、権力闘争があったからだ。アハマド・ネジャド大統領の必要以上の強硬発言は、イランの国際関係を困難に追い込んでいることは、誰の目にも分ろう。

 こうした動きに至るには、2009年に行われたイランの大統領選挙が、大きく影響している。当時、アハマド・ネジャド大統領は選挙結果をごまかし、ムサヴィ候補を退けて、大統領に就任したというのが、イラン国民の多くの考えだった。

 このため選挙後に、アハマド・ネジャド大統領がハメネイ師に謁見したとき、ハメネイ師は彼の手に、アハマド・ネジャド大統領がキスすることを、認めないという場面が公にされている。

 今回、ハメネイ師がこれよりも一歩踏み込んだ、アハマド・ネジャド大統領忌避を示したのは、ケルマンシャー大学での講演の中で、大統領選出の方法に言及したことだ。

 ハメネイ師はこの中で『大統領選出は国民による直接選挙という方法がありこれはいい。』としながらも『国会議員の中から選ばれる方法も時期が来ればある、しその方がいい。』といった発言をしたのだ。

 これは明らかな、アハマド・ネジャド大統領に対する挑戦であろう。貧民に物資を配布して、人気を集めているアハマド・ネジャド大統領が、もし国会議員による大統領選出に変わった場合、選出される可能性は低くなる、と考えられるからだ。

 このハメネイ師のアハマド・ネジャド大統領追い込みに対し、アハマド・ネジャド大統領はどう巻き返すのであろうか。その場合ものを言うのは、革命防衛隊をどちらが味方につけるのかではないか。

 そして、全く沈黙を守り続けているイランの正規軍が、どう動くかであろう。アメリカやヨーロッパ諸国による、イラン体制への圧力が強化される中で、イランは自らの手で、混乱をもたらそうとしているようだ。その混乱は、早ければ来月からでも、始まるのではないか。