「チュニジア軍司令官のエジプトリビアへの助言」

2011年10月 5日

 チュニジア臨時政府のシブシー軍指令官が、エジプトとリビアの臨時政府に対し、大衆の要求を受け入れすぎてはいけない、と助言している。シブシ―司令官は85歳の高齢であり、多くの経験を持つベテランだ。

 そうであるだけに、彼の言葉には重い意味がある。確かにその通りであろう。革命後エジプトの経済も、リビアの経済も悪化の一途をたどっているが、大衆は賃上げを要求し、かつ権利を主張している。

 諸物価が値上がりしているなかでは、大衆の賃上げ要求の気持ちを、理解できないわけではないが、国家そのものがいま、資金難で苦しんでいるのだ。エジプトでは観光業が壊滅的な打撃を受けているし、外国企業の投資も、途絶えている。これでは無い袖は振れまい。

 政治的な権利についても、現実を全く理解しないで、欧米並みの自由を、出来るだけ早く手に入れたいという考えは、社会を混乱に追いやるだけであろう。

 馬鹿げているのは、警察がデモを弾圧したということで、警察に対する権限の制限を要求したり、復讐を試みる者が多いことだ。このため、社会は安全が保たれず、犯罪が増加しているのだ。

 リビアでは、カダフィ打倒の戦闘に加わった者が、銃の携帯を権利として主張し、トリポリの街を闊歩している。トリポリ市民の間から、銃器の取り締まり要求が出ているが、なかなかそれは出来ないのではないか。

 結局のところ、こうした状況から、エジプトやリビアが脱出するためには、軍が権限を振るわなければなるまい。エジプトでは軍が残存し、堅固な状態にあることから、それが可能だが、リビアには国軍が存在しないために、それも不可能であろう。

 現状が続くのであれば、秩序は回復せず、社会にはますます不満と問題が、積み重なっていくことであろう。必要悪としての独裁の必要性を、何度か書いたが、エジプトやリビアは、まさにその時期に来ている、ということではないだろうか。

 チュニジアのシブシ―司令官は、勇気を奮って、大衆を敵に回しかねない、危険な発言をしたということだ。その発言は価値あるは正論であることは、冷静に判断できる誰にも分ろう。彼の勇気ある発言を称賛したい