9月23日にパルマーで起こった、イスラエル人とパレスチナ人の衝突で、イスラエル人の車が、パレスチナ人に投石され、1歳の子供が死亡する、という事件が起こっていた。
10月3日の早朝、ツバ・ザンガリヤ村のモスクが放火され、壁には『パルマーの報復』と書かれてあった。モスク(イスラムの礼拝所)内部にあったコーラン(イスラムの聖典)や他の宗教書籍、カーペットが焼かれ、現場は無残な姿をさらしていた。
この事件は、今後のイスラエル人とパレスチナ人との関係上、大きな波紋を呼び起こすのではないか、と懸念される。述べるまでもなく、マハムード・アッバース議長の国連での、パレスチナ国家承認演説は、アメリカの拒否権発動により、何の成果も上げることはあるまい。
それどころか、アメリカはこのことを口実に、パレスチナ自治政府に対する、援助2億ドルを停止するようだ。この援助が止められることは、パレスチナ自治政府にとっては、相当の影響を及ぼすものと思われる。もちろん、アラブ各国がこのアメリカ援助カットの、穴埋めをする方向で、話し合いを始めているが、それが達成される保証は何処にもない。
イスラエル国籍を取得して、イスラエル国内に居住するパレスチナ人や、ヨルダン川西岸地区、ガザ地区に居住するパレスチナ人の間では、相当不満が蓄積しているはずだ。それが何時まで暴発しないでいるかは、国連の討議結果が出るまでの間ではないのか。国連の討議の結果は、現段階から予測できる。それは『ノー』ということであろう。
その結果を耳にしたパレスチナ大衆は、怒りをイスラエルとパレスチナ自治政府双方に、向けるのではないか。このため、ネタニヤフ首相は今回の事件を重く見て、早急に『国家とって恥ずべき行為だ。』とコメントしているし、ペレス大統領は火事の現場にも出向き、火事見舞いを行ったようだ。
大衆はイスラエル人、パレスチナ人に限らず、不満が一定レベルに達すると、暴発するのが普通だ。今回の場合は、まさに不満が頂点に達する、手前のものであったのではないか。
こうした軽挙が、結局政府では抑えきれない、処理しきれない重大問題へと、進展していく危険性があるのだ。危機的状況に置かれると、人は自分の望む方向(平和)ではない、反対の方向に動き出す、癖があるのかもしれない。