「アメリカがイスラエルの中東地域での孤立懸念」

2011年10月 3日

 

 アメリカのレオン・パネッタ国防長官が、イスラエルの中東地域での孤立化を懸念し、中東和平を進めるべきだと語っている。彼はイスラエル、エジプトを訪問し、パレスチナ自治政府のマハムード・アッバース議長や、サラーム・ファッヤード首相とも会談する予定だ。

 この懸念を、レオン・パネッタ国防長官が口にしたのは、エジプト政府との会談や、中東情勢を判断してのことのようだ。アメリカやイスラエルの推測では、イランは現在核兵器の開発を急いでいる。それは述べるまでも無く、イスラエルに向けられるものだ、という認識だ。

 そのことに加え、ヨルダンでも反政府の動きが、活発化しており、バヘト首相の退陣を、要求するデモが起こっている。加えて、シリア国内情勢も、極めて不安定な状態にある。シリアが国内問題を誤魔化すために、イスラエルとの間で、緊張状態を生み出すこともありえよう。

 イスラエルとトルコとの関係は、中東諸国のなかにあって、例外的に良好だったのだが、このところ両国関係は、悪化の一途を辿っている。こうした実情を前に、レオン・パネッタ国防長官はイスラエルの、中東地域における孤立への、懸念を強めたのであろう。

 レオン・パネッタ国防長官は、こうしたイスラエルの中東地域での、孤立化を防ぐために、イスラエルに対する国防上の支援を、継続することを約束すると共に、イスラエル側に中東和平の努力を、呼びかけている。その第一にあるのは、イスラエルによるヨルダン川西岸地区への、入植と拡大を止めることだ、と語っている。

 イラン対応でも、レオン・パネッタ国防長官は、イスラエルが単独で行動を起こすことの無いように、釘を刺している。アメリカにはイランに対する先制攻撃をかける意志が無くても、イスラエルがイラン攻撃に出れば、アメリカはそれを放置することは、出来ないからであろう。

 イスラエルはエジプトとの関係も、大幅に後退させている。その最たるものは、エイラート近くで起こった、エジプト警官5人を殺害した事件であったろう。エジプトのカイロではこれを機に、イスラエル大使館が襲撃されるという、事件が起こっているのだ。 

 レオン・パネッタ国防長官は、イスラエルが中東地域で、軍事的優位を維持するばかりではなく、外交努力もするべきだと語っている。まさにその通りであろう。

 その第一歩は、ヨルダン川西岸地区での、入植活動の停止であろう。そのことをパレスチナ側に約束しない限り、イスラエルとパレスチナの間の、直接交渉は実現しないからだ。イスラエルが外交面で、頑なな立場を維持しているのは、弱さの証明ではあっても、決して強さの証明ではないのだ。