「米軍駐留8年半の成果は水泡に帰すか?」

2011年10月19日

 最近いやな情報が流れてきた。それはイラクでイランの革命防衛隊が、どんどん存在感を強めているというのだ。何せ、諸外国の大使館、イラク政府の要人の住居、米政府の機関などが安全目的で固まっている、バグダッドのグリーン・ゾーンの警護を、イランの革命防衛隊が引き受けているということだ。 

 アメリカはイランを、『中東の悪役』と非難し続けているが、これではその悪役に、守ってもらっているようなものではないか。言い換えれば、イランの革命防衛隊はアメリカの要人を、何時でも暗殺できるということだ。

 しかも、イラクの政府の要人たちの身の安全を、この革命防衛隊が補償しているということは、何時でも殺せるということでもあろう。そうなると、イラク政府はイランの革命防衛隊によって、牛耳られているのと同じではないのか。

 問題はバグダッドばかりではない。イラクの中南部の諸都市が、皆そうだというのだ。なかでも、ナーシリーヤ、アルアマーラ、そして南部の主要港のあるバスラ市は、完全に彼らのコントロール下に、あるというのだ。

 それにクルド地区も加わるというのだから、ほとんどのイラクが革命防衛隊によって、コントロールされる状態になった、ということであろう。加えて、イランの革命防衛隊は、イラク・シリアの幹線道路も、支配下に置いたということのようだ。

これではアメリカが、8年半にわたってイラク復興に尽力してきたことが、何の成果もアメリカにもたらさず、イランにただで払い下げたようなものではないか。

 これまでアメリカが費やした、イラク戦争とその後の人的資金的費用は、$1,265,244,237,158であり、戦死者は4769人、イラク国民の犠牲者数は1,455,590人と報告されている。

 加えて、イランの革命防衛隊はイラク南部を、支配下に置いたことで、イラク・サウジアラビアの国境地点に、軍事拠点を構築する方向に、あるということだ。それは将来、イランとサウジアラビアとの間で、戦争が起こることに、備えてのものではないのか。

 最近、イラクのマリキー政府は、アメリカ軍の撤退は完全なものであり、予定通り今年末までに、実現するようアメリカ側に要求している。それに対し、アメリカ側は4000人規模の軍人が、残留することを求めたが、拒否されている。

 このイラクのマリキー首相の強気の発言の裏には、イランの革命防衛隊の存在があるからではないのか。アメリカは巨費を投じ『イラクの民主化』という夢を実現しようとしたが、それは夢で終わるのかもしれない。中東の潮流は完全に、変わったということであろうか。