「リビアは密輸武器の販売元に・地域の危険度増す」

2011年9月28日

 リビアの大衆が42年にも渡る、カダフィ独裁体制を打倒すべく、立ち上がった。そしてほぼ勝利を手にした。その事実は喜ばしいことであろう。しかし、今回のカダフィ打倒劇の後には、難問が山積しているようだ。

 その一番の問題は、リビアが輸入した大量の武器兵器が、今後どう扱われるかだ。それがどこに密輸され、どうなるのか、ということを考えると、背筋が凍る思いがする。 

 今回のリビア革命の出発点となった、ベンガジの東部の街は、いま武器の密輸取引の場に、変わっているようだ。東部の街アジュダビア、アルバトナン、シャハート、ブルデイなどがそのようだ。

 これらの街は、述べるまでもなく、エジプトとの国境に近い街であり、エジプトの密輸業者が足を運びやすい、ということがあるのであろう。加えて、革命が起こった東部であることから、監視が緩いのかもしれない。

 シャルクルアウサト紙の記者のレポートによれば、積み込まれた武器はほとんど問題なく、エジプト領まで移動が可能なようだ。この記者が報告しているところによれば、道路で検問しているミリシアは『なんか新しいニュースがあるか?』と声をかけてくるだけで、トラックの積載荷物をチェクすることは、無いということだ。

 密輸される武器兵器は、カダフィ大佐の時代に、大量に買い付けられたものであり、リビア各地の武器庫に納められていたものだ。それが、リビアが無政府状態になった今、勝手に持ち出され、売られているということだ。

 ここのメイン商品はK11と呼ばれるカラシニコフ銃(AK47)の北朝鮮製コピーのようだ。密売者は『コリアン・メイドの新品だ、ロシアの中古とは違うよ。』と説明して売っているようだ。

 売られているのは、K11ばかりではない、カチューシャ・ロケット砲、サム‐7ミサイルも含まれているのだ。サム‐7ミサイルは射程距離が、3500メートルもある、対空ミサイルなのだ。それがK11よりも安価に、売られているとうということだ。

 武器兵器の種類は、サム‐7ミサイル、RPGロケット、手りゅう弾、地雷、暗視鏡といったものだ。それがリビア東部で買い付けられ、エジプトのシナイ半島のエルアリーシュに持ち込まれ、捌かれている。その最終的目的地は、パレスチナのガザ地区であり、レバノン、そしてシリアであろう。

 リビアのカダフィ体制が打倒されたということは、これまでリビアが買い込んだ武器兵器が、周辺諸国にばら撒かれるということであり、将来極めて不安定で、危険な状態を生み出すことになろう。

 そのことを、イギリス、フランスや、アメリカ、イタリアは予測していたのであろうか。武器が密輸される先は、ヨーロッパ諸国も含まれようし、ヨーロッパのマフィアが顧客になっている、可能性も否定できまい。もちろん、アフリカ諸国にも武器兵器は、密輸されて行こう。つまり、リビアのカダフィ体制を打倒したということは、新たな難問を創り出し。危険な地域を広げた、ということでもあるのだ。