エジプトの著名なジャーナリストである、ハサネイン・ヘイカル氏が、現在の中東情勢について、重要な発言をしている。彼の発言によれば、今アラブ世界で起こっていることは、第二次サイクス・ピコ計画であるというのだ。
サイクス・ピコは、1916年4月26日ロンドンで、サイクス(イギリス外務省・中東担当官)とピコ(フランス前駐ベイルート領事)との間で、オスマン帝国領土の戦後分割について、交わされた秘密協定のことを言うのだ。
つまり、第一次世界大戦中にイギリス・フランス・ロシアの間で話し合われた、オスマン帝国領土の分割と、その後の占有(植民地支配)のことだ。それと同じことが、今アラブ世界で進んでいる、とハサネイン・ヘイカル氏は指摘している。
一見する限りでは、オスマン帝国の影は何処にも無く、アラブ各国の民主化の波が、旧体制を打倒しているように見えるのだが、その裏では、イギリス・フランス・アメリカの介入が明確だというのだ。
アメリカは既に、パレスチナ問題に対しては、何も関心も示さなくなり、この問題を国連の小委員会に、委ねてしまったというのだ。つまり、アメリカが積極的にパレスチナ問題解決に、向かうことは無い、とハサネイン・ヘイカル氏は予測している。
リビアについて言えば、リビア国民のカダフィ体制弾圧からの、解放の支援でも民主化でも無く、まさにサイクス・ピコ協定の現代版であり、イギリス・フランス・アメリカ・イタリアが、それぞれの権益を狙って、介入しているのだということだ。
シリアも現在、非常に厳しい状況に向かっているが、ハーフェズ・アサド大統領から現在のバッシャール・アサド大統領に、権力が移行したことについては、問題があるとしながらも、そのことが、イラン問題と結びつき、遂にはイランと湾岸諸国との、対立に火を着けていく、と見ているようだ。
確かに、バハレーンやイエメンなどの問題を見ていると、イランとサウジアラビアとの国益が、正面から対立しているし、目に見えない形での、敵対行動も起こっている。それがこの先、表面化されより強化されていく、ということであろう。
そうした中で、トルコの位置は同国にとって、きわめて好都合だ、とハサネイン・ヘイカル氏は分析している。彼によれば、現在進められている、第二次サイクス・ピコ協定では、トルコもケーキの一片を手にすることが、出来るというのだ。