何ら成果らしい成果を上げていない、マハムード・アッバース議長が彼の任期中に、金星を挙げたいと思って始めたのが、今回のパレスチナ国家国連承認申請への動きだった。その実態を知っているパレスチナの幹部たちの間から、当然、無意味だという否定的な意見が出ていた。
実際に、もし国連がパレスチナを国家として承認したとして、どのようなメリットがあるのだろうか。イスラエルにとっては極めて不都合な、将来が待っていることは確かだ。もし、西岸地区やガザ地区が独立したパレスチナ国家の領土となれば、現在、勝手に行っている入植や、軍隊や警察を送り込んでの、逮捕もできなくなろう。
そればかりか、イスラエルがこれまでやってきたことが、犯罪であるとして、国際司法裁判所に提訴される、危険性もある。そうなれば、イスラエルの国際的な評判は悪化し、これまで我慢してきたヨーロッパ諸国の中でも、反ユダヤのムードが、高まっていくことになろう。
こうした実情から、アメリカ政府は安全保障理事会の場で、パレスチナ国家の承認に向け、あくまでも拒否権を発動する立場を、貫き通しそうだ。それに先駆け、経済援助を止めるという警告を、パレスチナ自治政府に対し、アメリカ政府は伝えている。
年間5億ドルの援助が、西岸地区開発の名目で、アメリカからパレスチナ自治政府に送られているが、その援助が止まってしまえば、自治政府はほとんど機能しなくなるだろう。アラブ諸国は大盤振る舞いのような額を提示するものの、実際にはなかなかその額を、振り込んでくれないからだ。日本などは例外的なお人よし国家で、催促される以前に嬉々として、援助金を送っている。
今回のパレスチナ国家承認をめぐり、パレスチナ自治政府は大代表団を、アメリカに送り込む予定にしていたが、多くの幹部が代表団への参加を、拒否している。そのことは、国家承認を理由に、アメリカやヨーロッパの援助が、止まったのでは食っていけない、という現実的な判断に、基づいてであろう。
パレスチナ人は1973年の第1次オイルショック以来、ごうごうとアラブ産油諸国に流れ込む、ペトロ・ダラーの一部を、分け与えられる状態が続いてきた。その中では、自活する精神は、完全に消えてしまったようだ。
何度も書いたが、パレスチナ自治政府やPLOの幹部たちは、豪勢な城とも呼べる邸宅を構え、何台ものベンツを所有している。それだけでは飽き足らず、最近ではパレスチナ自治政府の、実質的首都ともいえる、ラマッラ市にヨーロッパ調のしゃれたレストランや、カフェーを開店させている。
そこでは『毎夜のようにパレスチナの革命とその歴史』が語られ、その裏では金儲けの話が、なされていることであろう。イスラム国とはいえ、そこには売春婦もアルコールも、ふんだんにあるのだ。もちろん、とばく場もあろう。
一体世界は何時、パレスチナ人を真の革命をする気に、させるというのだろうか。パレスチナ人たちを買い殺しにして、イスラエルの安全を確保することが、何よりも優先されるのであろうか。
マハムード・アッバース議長に問うてみたい『あなたは死をかけてパレスチナを独立国家にしたいのか、それとも戦わずして国家を手に入れたいのか、そのために経済的苦境に追い込まれる覚悟ができているのか?』と。