「タンターウイ国防相とエジプト軍の実力」

2011年9月17日

 

 リビアの革命に、イギリスとフランスが早い段階から介入したのに、シリアでも同様の展開になっているにもかかわらず、欧米が介入しないのは、イスラエルとシリアとの、微妙な関係もさることながら、シリアには石油もガスも無く(極少量は算出しているが)、同国に軍事関与しても、あまりメリットが無いからだ、とアラブ人の多くは考えている。

 確かに、早期介入したリビアには、ガスも石油資源も豊富であり、しかも、いままで溜め込んできた資金も、相当額あるはずだ。したがって、カダフィ体制を打倒することに参画すれば、それ相応の利益を、手にすることが出来る、ということであろう。

 それではエジプトはどうであろうか。エジプトは8600万の人口を擁する大国であり、インテリも相当数おり、軍も相当の実力を有している。したがって、下手な軍事介入をすれば、とんでもない大火傷を、することになろう。

 エジプトの場合は革命を支持するだけで、欧米はそれ以上の関与をしなかったようだ。しかし、革命が達成し、同国の経済が行き詰まると、即座に介入を始めた。それは金融介入の試みだった。

 革命が達成されてしばらくした、4月の終わり頃であったろうか。エジプトの財相はこのままで行けば、7月から国家公務員に、給与が支払えなくなる、と悲鳴をあげたのだ。

 欧米はエジプトに対し、IMFから23億ドルの融資をする、という甘い話を持ちかけている。その貸付でエジプトを縛りつけよう、自分たちの自由にしよう、ということであったろう。

 これに対し、タンターウイ国防大臣は、国防省が貯め込んでいた資金を出し、IMFからのか借り入れを、しなかったというのだ。

 エジプトの国防省は、実は大企業と変わらない、性格を持っている。軍に必要なもの全てを、自己調達できるように、なっているのだ。兵士の食料、軍服に始まり、武器や軍事車両から、重兵器にいたるまで生産しているのだ。

 軍にはムバーラク政権時代にも、他の省庁に比べ大幅な権限と、特典が与えられていた。例えば、海岸線の土地を軍事的に必要だと言えば、そこを軍が使うことを、政府は許可していたのだ。その一部が民間に払い下げられる、ということもあったと聞いている。

 タンターウイ国防大臣とエジプト軍は、今後もこの特権を、維持して行くのであろう。軍は戦闘だけではなく、経済侵略に対しても、国を守らなければならないということだ。それを立派にこなしているのだ。