「シリア反政府代表の危険な宣言」

2011年8月30日

 シリアの国民による政府に対する抗議デモは、3月以来続いている。これまで多くの国民が犠牲になり、軍人や警察にも犠牲者が出ている。シリア政府に言わせると、スナイパー(狙撃主)がビルの屋上などから銃撃し、軍人や警察そしてデモ参加者を殺害していることが、シリア国民の反政府感情をあおったのだ、という説明になる。

 そのシリア政府の説明にも一理あり、全面否定できない。なぜならば、それだけシリアの国内状況が、周辺諸国に与える影響が大きいからだ。周辺各国にしてみれば、シリア国内で起こっている反体制運動の火の粉が、自国に飛んでこないことを望んでいるし、シリアの体制崩壊が起こった場合の影響も考えているので、当然、現段階から画策しているということであろう。

 しかし、多くの犠牲をデモ参加者側に生んできた、今回のシリアの大衆蜂起は、なかなか戦闘状態を生みださなかった。それは武器の調達が、難しかったからであろう。

 それがここにきて、状況が一変したようだ。パレスチナのガザには対空ミサイルや対戦車ロケット砲が届いているようだが、同じようにシリアの反政府側にも、武器が届き始めているのではないか。

 シリアの革命評議会の代表ムハンマド・ラッハール氏は、シャルクルアウサト紙とのインタビューの中で、武力闘争に踏み切ることを宣言した。彼に言わせると、シリア体制との平和的な交渉は、もうあり得ないということのようだ。

 問題はこれらの武器が、どこから来るのかということだが、多分にリビアからの密輸、という説明がなされるのではないか。確かに、リビアから武器が密輸されているだろうが、それを誰が実行しているかについて、考えてみる必要があろう。

 シリアで反体制側が武器を持って、武力闘争を展開するのであれば、周辺諸国のうちの何カ国かは、それを歓迎し支援するものと思われる。

 シリア人はアラブ人の中にあって、最も聡明といわれているのだが、この国でも最終的には、大衆運動が武力闘争の段階に、入っていくのであろうか。イラクやイエメン、リビアの同国民同士の流血の惨事の、シリアが二の舞になることは、できるだけ避けたいのだが、状況がそれを許さないのであろう。