エジプトの大衆蜂起が革命に発展し、最後の段階で登場したムスリム同胞団が、その後、軍によるクーデターで終わった革命を、軍に接近することで、我が世の春を迎えたかに見える。
ムスリム同胞団はこの革命後、エジプト国内で完全に活動の自由を得た。しかも、アメリカが彼らの存在を認め、ある種の保証もしたかのように見える。そのため、ムスリム同胞団は来る選挙で、活動の自由の下に、持てる組織力を発揮すれば、確実に第一党になれる、と確信しているようだ。
このスリム同報団の自信が、いま彼らに災いの元を、造りかけているように思える。それは最初から懸念していた、ムスリム同胞団主体のエジプトが、イスラム色を強めていくということだ。
そうなれば、彼らムスリム同胞団は憲法の中に、どんどんイスラム法を取り入れていくことになり、それはエジプトの一大産業である、観光業に大きなマイナス効果を、生み出すということだ。
最近になって、ムスリム同胞団が母体の政党である、自由公正党の事務総長であるムハンマド・カタトニー氏が、外国人観光客に対する服装規制をすべきだ、と言い出したのだ。つまり、外国人女性観光客が、地中海や黄海の海岸で、ビキニの水着を着けることを、禁止するということだ。
そればかりではない、外人観光客がアルコールを飲むことについても、規制すべきだと言い出しているのだ。ただし、それは路上での飲酒ということのようだが、将来的にはレストランでも、禁止になる可能性があろう。
こうしたムスリム同胞団の、厳しい規制の動きについて、エジプト観光会社協会のハサン・アッシャラア会長は、真っ向から反対している。130億ドルにものぼる観光収入が、アルコールと水着を規制したのでは、だめになると猛反発している。
同様の意見は、ハーゼム・アルベブラーウイ財相も語っている。彼によれば、2009年116億ドルだった観光収入が、こんなことをされたのでは激減する。現在の混乱ですら、100億ドルに減っているのだ、と嘆いている。
アルコールや水着だけではなく、エジプトの観光収入元である、ピラミッドやスフィンクスについても、規制するべきだという、イスラム原理主義者もいる。彼らはサラフィー主義のダウアのメンバーたちだ。
そんなことをしたのでは、エジプトは観光収入を無くすことになり、庶民の暮らしも、国家財政も苦しいものになろう。
カイロアメリカ大学のハーニー・ヘンリー教授は、この動きを『イラン革命と同じ動きだ、次第にムッラー(坊主)たちがイランの革命を乗っ取ったのと同じだ。』と非難している。ムスリム同胞団は自由公正党を結党する段階で、コプト教徒を抱きこんだが、考えていることは決して自由ではないということが、次第に明らかになってきた、ということであろう。
しかし、こうしたムスリム同胞団の増長とも言える動きは、次第にエジプト国民の支持を減らしていくことに繋がり、最終的には来る選挙で、第一党の地位を勝ち得ることが、出来なくなるのではないか。墓穴を掘るとは、このことを言うのだろう。