「リビア革命の中東諸国への影響」

2011年8月26日

 あれだけ世界中を騒がせ続けてきた、カダフィ大佐だけのことがあって、彼の体制がほぼ終わりの時を迎える今日、意外な問題が露呈し始めている。

 リビアに限って言えば、カダフィ大佐がおめおめ降参するわけはないのだから、南部にある彼の拠点セブハにこもって、巻き返しのゲリラ戦争に出てくるだろう。そうなった場合、リビアはアフガニスタンと同じように、長期に渡る戦争状態に引きずり込まれるだろう、という予測を立てている専門家もいる。

 それ以外にも、中東世界全体を包む大問題が、持ち上がっている。それはカダフィ大佐が石油収入で手にした大金を使い、膨大な量の武器兵器を買い込んできたということだ。

 今になってそれらの武器兵器が、闇ルートで中東諸国に、密輸されているというのだ。AK47カラシニコフ機関銃はもちろんのこと、対戦車砲。ロケット・ランチャーや地対地、地対空ミサイルなども、含まれているというのだ。

 そればかりではない、最近になって話題になってきているのは、カダフィ大佐がかつてWMDの開発に力を入れていたことから、化学兵器やダーティ・ボムもあるだろうというのだ。

 もしダーティ・ボムが闇ルートで他の国に流れ出した場合、その被害は想像を絶するものになりかねない。

 現在噂されているのは、リビアから隣国のエジプトにこれらの武器兵器が流れ、そこからレバノンやパレスチナのガザ地区に、入っているというのだ。しかも、レバノンに運ばれた武器兵器は、レバノンからシリアに持ち込まれている、という噂が流れている。

 そうなると今後、シリアの体制はリビアから密輸された、武器を手にしている反体制派の国民と、戦わなくてはならなくなるということだ。今までは、シリアに流れ込んでいた武器の量が、それほど多くなかったために、力で抑え込むということが、何とか政権の安定を守ってきたが、これからはどうなるか分からないということだ。

 リビアから放出された武器の行き先は、シリアだけではなかろう、トルコのクルドゲリラや、イエメンの反体制派にも流れることを、考えなければならないし、エジプトの内部でも拡散する可能性があろう。

 つまり、今回リビアで起こっている政変劇は、『カダフィ打倒の次はアサド打倒だ。』といったような政治的な意味だけではなく、武器や兵器の拡散にも、大きな影響を及ぼしているということだ。結果的に中東諸国は、より複雑な状況に向かっていく、ということであろう。