イスラエルのエルサレムポス紙に、興味深い記事が掲載されていた。それによれば、リビアの反体制派のムスタファ・アブドッジャーリール氏が、イギリスに住むユダヤ人に対し、リビアに戻って政党を結成し、政治に参加してほしい、と要請したというのだ。
このユダヤ人はロンドンに居住する、ラファエル・ルゾンン氏で、在英リビア・ユダヤ人協会の会長だ。彼はカダフィ体制の時代にも、何度かリビアを訪問し、カダフィ大佐とも会見しているということだ。
ラファエル・ルゾン氏は、新生リビアが民主的な国家になるのであれば、リビアに戻り活動することも、やぶさかではないと語っている。
そもそも、リビアを始めとする北アフリカのアラブ諸国には、現在なお相当数のユダヤ人が居住している。モロッコのユダヤ人グループが、エジプトとイスラエルの和平の仲介役として、秘密裏に動いたという話は、事情通の間では有名だし、幾つものユダヤ人会議が、モロッコで開催されてきたことも事実だ。
リビアには1930年代、ユダヤ人居住者が最も多かったと言われており、当時リビアには、25000人のユダヤ人が、居住していたということだ。リビアにはかつて、82のシナゴーグ(ユダヤ教会)が存在していた。
ラファエル・ルゾン氏はこのシナゴーグに絡んでの話であろうが、リビアにはユダヤ人に属する不動産、かつて放棄せざるを得なかった財産などが、残されているということのようだ。
当然、今後リビアが民主化していく中では、元リビアに居住したリビア系ユダヤ人に対する、帰国と国籍の付与、そして財産の補償問題が、持ち上がってくるだろう。
イラクのサダム体制が打倒された後も、イラク系ユダヤ人の権利の話や、国籍取得、選挙参加の権利などが、話題になっていた。リビアで今、そのことが持ち上がっているということは、今後、政権の崩壊が予測される、シリアやイエメンでも、同様の問題が持ち上がって来ようし、エジプトですらもこのユダヤ人問題を、無視するわけには、いかなくなるかもしれない。
この元アラブに居住していたユダヤ人の権利と、国籍をめぐる問題は、新たなアラブ・ユダヤの問題となっていく、可能性があろう。この裏には、パレスチナ国家の設立が、絡んでいるのではないか、というのは考え過ぎであろうか。