カダフィ大佐によるリビア統治が、ほぼ終わりの時を告げているようだ。しかし、革命派のリーダーであるムスタファ・アブドッジャリール氏は、カダフィ大佐を捕まえるまでは、革命が終わったとは言えない、と記者会見で語った。その通りであろう。
どうやらリビアの政治犯は、ほぼ釈放されたようであり、残りはカダフィ大佐が隠れていると思われているバーブ・アジージーヤの自宅を落とし、彼を逮捕することであろう。
この状況下で革命派のリーダーである、ムスタファ・アブドッジャリール氏はカダフィ大佐と、彼の家族の裁判は、公平なものにすると語っている。彼の記者会見での対応は、立派で冷静なものだった。
しかし、問題が幾つか残されている。第一の問題は、カダフィ大佐はバーブ・アジージーヤの自宅の地下に、大規模な地下居住施設を造っており、そこに当分の間、隠れ住むことができると言われている。そこも徹底的に調べなければ、彼の逮捕はありえまい。
記者会見では、カダフィ大佐の所在については、不明だと語っていたが、国外に逃亡したことも、考慮する必要があるかもしれない。常識的には、彼の妻と子供、孫の相当数が、リビア国内にいることから、彼が一人だけ逃れるとは、思えないが。
第二の問題は、カダフィ体制が打倒された後、革命派は意思を統一して、リビアの再建に向かえるのか、という問題だ。これまでも、リビアでは部族間の利益の対立が、何度と無く話題に上ってきた。
このことに加え、リビアは三つの地域が、それぞれに個性を持っており、地域意識が強いことも、忘れるわけにはいかない。西のトリポリタニア地方、東のキレナイカ地方、そして南部のフェッザーン地方だ。
王制時代には、西のトリポリと東のベンガジが、首都として維持されていたのだ。それだけリビアでは地域意識が、強いということであろう。
加えて、リビアの革命に参加したグループは、部族単位、宗教グループ単位、世俗主義グループ単位など、各種のグループによって、構成されたものだった。そのことも、今後のリビアの統一に、問題を生み出す可能性があろう。
リビアの今後を考える場合、イラクの前例を考えてみる必要があろう。イラクは未だに宗教宗派、スンニー派とシーア派の対立があり、加えてクルド人のグループが存在し、なかなか国内の意志統一が、できないでいる。アメリカ軍の侵攻が、2003年の3月だったが、8年半が経過した今なお、イラクの国内情勢は、安定していないのだ。
西側諸国の分析では、統一政府がリビア革命後に、スムーズに結成され、石油施設の補修が行われても、石油の生産レベルを、革命前のレベルにまで回復できるのには、最低3年の歳月が、かかるだろうということだ。
加えて、イギリスやフランス、そしてアメリカは、今回のリビア革命で、重要な役割を果たしている。軍事指導をし、武器を提供し、空爆を実行している。その費用は結構な金額にのぼるだろう。
そのことはイギリスやフランス、そしてアメリカが革命支援の対価を、リビアの新政府に、求めてくるということだ。今後、リビア新政府は多くの難問を抱えて、新体制を創って行くということであろうか。