「想像の域を出ないのだが」

2011年8月16日

  シリアの国内状況は、もう戦場といっても、過言ではあるまい。このため、周辺諸国が何とかシリア政府による、国民殺戮を止めようと、努力している。トルコからは、ギュル大統領やダウトール外相がシリアを訪問し、国民に対する殺戮を止め、国内政治改革を迫っているが、らちが明かず、軍を派遣するとまで、警告している。

 サウジアラビアやヨルダンなども、シリアのバッシャール・アサド政権の、国内動乱に対する対応が、非人道的だとして非難している。パレスチナのヨルダン川西岸地区でも同様に、バッシャール・アサド大統領の辞任を、求めるデモが起こっている。

 こうした周辺諸国の非難に対し、バッシャール・アサド政権はテロリストによる、デモの混乱と過激化を図る、狙撃が行われている、と非難してきた。先日もレバノンのトリポリ港から、シリアのバニヤース港に向けて、武器が何十回と無く、密輸されたと主張している。

 さて、それではその密輸された武器を使って、シリア政府が主張しているように、デモ参加者や軍警察に対し、無差別に狙撃を加えているのは、誰なのかという疑問が湧いてくる。

 つい最近、パレスチナ内部の権力闘争の、情報が流れてきたが、それによると、マハムード・アッバース議長を激しく非難しているムハンマド・ダハラーン氏は、イスラエルのアラブ人から武器を買い、シリアに密輸しているということだ。

 そして、もうひとつ流れてきた情報では、シリアのラタキア市が、シリアの陸海軍によって攻撃される中で、ラタキア市にあるアッラムル難民キャンプに対しても攻撃が行われ、多くのパレスチナ人の若者が、逮捕されているということだ。

 こうした断片的な情報を眺めていると、シリアのデモを暴動のレベルにまで、高めるために狙撃したのは、パレスチナ人ではなかったのか、と思えるのだが。そのことを知っているからこそ、シリア政府がラタキア市への攻撃の中で、パレスチナ人を標的にしたのではないか。

 イランはこれまでシリアの暴動では、第三者が狙撃をし、デモをあおり激化させている、というシリアの説明を、支持してきていた。そして、外国の介入と陰謀によるものだ、とも主張してきている。

 シリア政府やイラン政府が、何の根拠も無くこうしたことを、主張するとは思えない。最近、アラブ世界で起こっている変革には、押し並べて、外国の影がちらつくのだが。

 シリアに武器を密売している、とマハムード・アッバース議長によって非難されれている、ムハンマド・ダハラーン氏はイスラエルやアメリカと、親密な関係にあることを、付け加えておこう。