インターナショナル・ヘラルド・トリビューン(IHT)紙が、興味深い記事を発信した。それによれば、イラクのマリキー首相がシリアのアサド大統領を、支持する発言をしたというのだ。
現在、ほとんどのアラブの首脳は、アサド大統領のシリア国内における、デモに対する対応が、ひどすぎると非難しているのだが、マリキー首相は逆に支持する発言をしているのだ。
シリアとイラクとの関係は、サダム・フセイン政権時代、同じバアス党政権であったにもかかわらず、敵対関係にあった。サダム・フセイン政権が打倒され、シーア派が主流となった現在の体制下になってからは、次第にシリア・イラク関係が改善し、最近では両国間の経済協力が、促進されるようにすらなっている。
このことについて、イラクのマリキー政権がシーア派であり、イランの強い影響を受けるようになり、イランと緊密な関係にあるシリアとの関係が、深くなったのであろうと見られている。
問題は、イラク国内にそれがどう影響を、及ぼすかということだ。イラクにはマイノリティのスンニー派が存在し、彼らは今回のシリアの大衆蜂起を支持し、アサド政権によるデモに対する弾圧を、強く非難している。
もし、このままシーア派のマリキー首相が、シリアのアサド政権(アサド大統領はシーア派の一派アラウイ派)を支持し、関係強化を続けていけば、イラクのスンニー派国民とシーア派国民との関係が悪化し、武力衝突に拡大する危険性があろう。
そうでなくとも、イラク国内では、相変わらずアルカーイダによる(?)とされる、テロが続いており、毎日のように何十人というイラクの国民が、死傷しているのだ。
こうした現状に対して、欧米諸国の間からは、次第にシーア派政権を、イラク国内に維持することは、国益に反するという意見が、出てくるのではないか。イラクがこのままイランとの関係を強化していけば、そのことは、バハレーンを始めとする湾岸諸国にとって、危険なものとなっていく可能性を、否定できないからだ。
既に報告したように、イラクのシーア派国民の一部は、バハレーンのシーア派国民が、スンニー派体制によって弾圧されていることを、放置すべきでないと主張し、バハレーンで抗議デモを続ける、シーア派国民への支援物資を積んだ、船団が送られてもいる。
また、クウエイトのムバーラク港(メガ・ポート)建設についても、イラク南部の住民(シーア派)が強く抗議している。つまり、イラクのシーア派国民の一部が、バハレーンやクウエイトに対して、敵対行動に出る危険性が、否定できないということだ。マリキー首相にとっては、シリア対応が決して容易な問題ではない、ということであろう。