「イスラエルの戦争懸念は妥当か」

2011年8月12日

 イスラエルはパレスチナ自治政府が国連に対し、パレスチナを国家として承認するよう、提案することに対し、異常なまでの警戒心を、かきたてているようだ。このため、イスラエルの軍は特別な訓練に、入ることになっている。

 戦争を始めるに当たっては、事前に緊張感を高め、心の準備をする必要があるのだから、イスラエルの戦争を前提とする、今回の軍事訓練は、必ずしも間違った判断ではあるまい。

 イスラエルが懸念しているのは、パレスチナ自治政府が計画している、国連提案の時期に実施する予定の、穏健なデモが結果的に、ヨルダン川西岸地区からイスラエル領内に、デモ隊が流れ込み、混乱を生むということだ。

その場合、イスラエル治安軍はパレスチナ人のデモを、制止するのは当然であり、それに激こうしたパレスチナ人デモ隊と、イスラエルの治安部隊とが衝突する可能性が、高いと判断しているのだ。

また、シリアとの国境にあるゴラン高原に対しても、在シリアのパレスチナ人がデモ行進し、イスラエル領土内に侵入し、イスラエルの治安部隊と衝突することも、想定している。

パレスチナのガザ地区でも、ハマースがそうしたヨルダン川西岸の動きに合わせ、しかるべき行動をとるるだろうし、レバノンからもヘズブラによる、軍事的な動きがあることを想定している。

イスラエル政府は結局、レバノン、ヨルダン川西岸地区、ガザ地区、シリアの四方向から、自国に対しデモ隊が押し寄せ、それがイスラエルの治安部隊との間に衝突を起こし、やがて戦争にまで発展する、という予測をしているということだ。

そうしたことは、あまり現実的ではないと思えるのだが、イスラエルでは30万人にも上る、テント・デモが続いていること、シリアでは各地で暴動が起こっていることから、外部との緊張を生み出すことが、国内問題を抑え込むうえで、有効な手段と考えることもありえよう。

したがって、今回イスラエルが採った準軍事態勢は、決して冗談の範囲ではない、現実味を持ったものだと受け止めておく、必要があるのではないか。