いまはイスラム教徒にとって、重要で神聖なラマダン月、友人同士が招待しあって、一日の断食の後の食事(エフタール)を、とるのが楽しみだ。昨日はトルコの友人に誘いをかけたところ、逆に誘われてごちそうになった。
食事の後、中東情勢について意見交換をしたのだが、その中で私はシリア政府が自国民を、虐殺していることについて話したら、トルコ人も応分の関心を払っているようだった。
そこでトルコがダウトール外相をシリアに派遣したのは、トルコのシリアに対する最後通牒を、伝えるためではなかったのか、と一瞬思えたのだ。トルコのエルドアン首相は、5年も前からシリアのアサド大統領に対し、国内政治の大改革の必要性を助言してきていた。そうしなければ、シリアが危険な状況になることを、懸念していたのだ。
しかし、アサド大統領はエルドアン首相の助言を、聞き入れることができず、現在のような状況に陥っている。その結果、多くのシリア国民がトルコ領内に難民として逃げ込み、シリア国内では虐殺が続けられている。
トルコにとってシリアの国内問題が、他人事ではないのは、シリアの中のクルド人が、トルコのクルド人とつながりがあり、放置すればシリアの国内問題が、トルコの国内問題に飛び火する、危険性があるのだ。
加えて、現在危険な状況に陥っているシリア北部は、第一次世界大戦前、つまりオスマン帝国時代は、トルコの領土だったところだ。したがって、シリア北部の住民に対するトルコ国民の感情は、他の地域とは格段の差があり、トルコ人にしてみれば親戚のような、感情を抱いているのであろう。
そこで考えられることは、トルコがシリアの北部に軍を派遣し、シリア国民のための安全地帯を、創るのではないかということだ。そうしたトルコの行動は、欧米が賛成するであろう。
そして、そのトルコ軍のシリア北部駐留が、長期化していく中で、結果的にその地域はトルコ領に、併呑されていくのではないかということだ。その話をしたところ、トルコの友人はエルドアン首相が願っているのは領、土ではなくあくまでも人道的救済、支援だと言い、もしトルコ軍がシリア領内に入るようなことになれば、イランが黙っていないだろうという意見だった。
それに対し私が答えたのは、イランは自国の国益を優先して、決定を下すだろう。トルコとの関係がシリアに優先するか、シリアがトルコよりも優先するかだ、というものだった。シリアの内紛がトルコに大決断をさせるのは、意外に近い将来ではないか、と思えてならない。・