シリアの内紛が始まって、すでに数カ月が過ぎ去っている。この間にシリア政府は何度となく、外部の破壊工作員がシリアのデモ隊メンバーを殺害し、加えてシリア軍や警察を殺害していると主張してきていた。
そのシリア政府の主張にも一理あろうし、同時にシリア政府が軍や警察に指示を送り、シリア国民の弾圧を行う中で、死傷者が出たことも事実だ。そのシリア政府の反政府デモに対する弾圧が、最近になって厳しさを増していることから、アラブ諸国や欧米諸国も座視できなくなり、非難を始めるとともに、何らかの具体的な行動を、取り始める段階に至っているようだ。
しかし、シリアのバッシャール・アサド大統領を非難する時、忘れてはならない部分があることを、ここでご紹介したい。シリアで大衆によるデモが始まって間もない段階から、実は政府ではない外部のスナイパー(狙撃者)による、銃撃の犠牲者が出ていたという事実だ。
そのことが時間の経過とともに、政府による犯行とされ、反政府の機運をますます盛り上げていったことは事実だ。どこの国の革命でも言えることだが、できるだけ早い段階で、市民の流血と死が必要になるのだ。
その市民(デモ参加者)の流血と犠牲が、革命の炎にとってガソリンとなり,火勢を強めることは確かだ。
シリアの場合、最近明らかになった事実がある。それはレバノンからシリアに向けて、30回以上も武器の密輸が続いていたが、最近摘発されたという事実だ。そのニュースによれば、シリアの港町バニヤース市で、248個の武器が梱包された貨物が摘発された。中には狙撃銃、ポンプアクション・ライフルそしてプラスチック爆弾が大量に入っていたということだ。
このバニヤースは元副大統領のハダーム氏の出生地であり、他方、レバノンのトリポリ市はレバノンの元首相で暗殺された、ハリーリ氏の支持基盤の街だ。このハリーリ氏と失脚したシリアのハダーム副大統領とはきわめて近い関係にあった。
つまりこうだ。レバノンのトリポリ市はハリーリファミリーのテリトリーであり、シリアのバニヤース市はハダーム元副大統領のテリトリーだ。そのハダーム氏がシリアの混乱に乗じて武器を密輸し、自分の息のかかった反体制派の人たちを使い、軍や警察一般のデモ参加者を狙撃をさせ、反体制の機運をあおっている。
そこで気になるのは、ハリーリ氏とサウジアラビアとの関係が、極めて良好だというもう一つの事実だ。そして、そのサウジアラビアと外国との関係は???シリアの大衆蜂起もそう簡単な構図ではないということだ。