「ラマダンにまつわる笑い話のような本当の話」

2011年8月 8日

 アラブ首長国連邦を構成する、7首長国の一つにドバイ首長国がある。この国は当初、少量の石油を産出していたが、その後枯渇状態になり、現首長ムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトームが、経済立国を目指した。

 結果的に、ドバイ首長国は観光、商業基地、貿易中継基地として、世界的に知られるようになり、石油産出国にも負けない、繁栄を誇っていた。しかし、世界経済の後退の波を受け、ドバイ首長国も経済後退期に入った。

 経済繁栄時に計画された、ブルジュ・ハリーファ・タワーはそれでも、完成することができた。このブルジュ・ハリーファ・タワーは約1000メートルの高さがあり、オフィス・ビルのほかに住宅部分もある。

 ところがこのブルジュ・ハリーファ・タワーで、今年のラマダンに入り、大変な問題が持ち上がっている。それは、高度の高い場所では、断食の終わる時刻が、地上よりも遅くなるということだ。

 確かにそうであろう。高い場所では太陽が沈むのが、地上よりも遅いことになる。そこで宗教学者が言い出したのは、地上80階に住む人は地上よりも3分遅れて、断食を終えろというものだ。

 加えて、150階以上に住む人はそれよりも、3分遅れて断食を終えろということだ。

 たかが3分、5分とお思いだろうが、今年の断食は厳しい。朝の3時頃に始まり、日没は午後7時40分ごろなのだ。乾いた気候の高温のドバイでは、3分が極めて厳しいのだ。

 世界一高いタワー・ビルに住む優越感は、とんでもない番狂わせな結果を、住民にもたらしているようだ。人並みの暮らしが一番いい、ということなのだろうか?