さる7月15日拙著『革命と独裁のアラブ』が売り出されましたが、お陰さまでアマゾンの中東部門では1位になっている日が続いています。
カスタマーレビューには6人の方が印象をお寄せくださいました。それ以外に参議院の佐藤正久さん、軍事評論家の小川和久さんがツイッターで複数回伝えてくださいました。感謝します。
ツイッター
SatoMasahisa 佐藤正久
佐々木良昭氏の「革命と独裁のアラブ」(ダイヤモンド社)の核心部分は、1:独裁者は大衆が創り大衆が打倒する 。2:トルコがこれから中東をリードする 。3:アメリカは血を流さない戦争を考えた。です 。興しろいです!
kazuhisa_ogawa 軍事アナリスト 小川和久
東京財団・佐々木良昭氏の近著「革命と独裁のアラブ」(ダイヤモンド社)。この人しか持たないトルコルートの情報ネットワークを駆使して、複雑多岐に揺れる中東情勢を読み解く。陸自イラク派遣時、現地で通用する数少ないアラビストとして小泉首相の要請で派遣準備から先遣隊にも同行。成功に導いた。
カスタマーレニューから
メイ「この本は、私に大切なことを教えてくれました。
日本人の世界を見る視線が、西欧中心史観にとらわれすぎていたということ。これはたぶん、戦後の学校教育の影響が大きいと思います。
アラブから世界を見るとなにがわかるか、さらにいえばアジアから世界を見るとなにが見えてくるのか。
この本は、私に新しい視線の方向を教えてくれました。感謝! 」
KOCHAN「著者(佐々木良昭氏)が語る中東の実情は、いつも分かりやすい。それは、著者自身の実体験から得られた知識やノウハウを語っているためであろう。また、著者が日本人であることも大いに関係していると思う。仮にイギリス人が中東での出来事を英語で記したものを日本語に翻訳したら、どういうことになるか。アラブ人の心の機微などは、どこかに吹き飛んでしまうのではないだろうか。中東に関係している人もそうでない人も、この本から得られるものは多い。周りがすべて日本人という環境の中で語られる日本人論にはどこか迫力がない。著者が語る中東論は、イスラムという異文化の中に飛び込んだ一日本人の証言という意味で、辛辣な日本人論でもあるのだ。 」
週刊宝石編集部「カダフィがリビアで革命を成功させたときに日本から単身、留学生として乗り込んでいってから40年以上、おそらく日本人の中でだれよりもアラブを見続けてきた著者が、アラブの社会構造をやさしい語り口で解き明かしている。
なかでさまざまなアラブの「ひそひそ話」が紹介されているが、「ビン・ラーディンがアメリカ系の病院で治療を受けていた」という話には驚かされた。そして、今後アラブの覇権を握るのがトルコだという結論にも・・・。 」
YTERASAWA 「2011年初頭、世界を驚かせたジャスミン革命をはじめとする最新の情勢から、中東地域がたどってきた歴史、そしてアラブ・イスラム文化の本質まで、著者ご自身の体験や検証をふまえて紹介されています。
また、ネットの影響力や国際的なパワーバランスの未来予想といった、現代において特に興味深いテーマにも触れられています。
教鞭をとられていた経歴も影響してか、この本は大学の講義を受けるかのような感覚で読み進めることができました。」
藤崎健一「 (距離も心情も)遠くて遠い国、中東諸国の内側-生活習慣からコーラン(イスラム教)が
人の生き方までに浸透している点-に、著者の体験を織り込みながら迫った一冊。
関係者への配慮もあって、2011年初頭から春にかけて起きた「アラブの春」への言及は、ぼかし
気味の記載ですが(穿ってみると陰謀論的にも見える。これは読者の判断力に依る)、それ以外の
ところは、目から鱗が...という感を味わえる内容でした。
例えば...
・何故、王様にしろ独裁者にしろ、トップダウンの国ばかりなのか
→コーラン(イスラム教)自体が人に頼ることを良しとしている。施しを受ける人よりも、施しを
行う人の方が良しと言う考え方(富む人が、施しを行うことで物質的な欲に溺れることを回避
「させてくれる」のだから、と)。だから、食べさせてくれる限りは為政者(と取り巻き)が
不正蓄財しようと気にしない、と。元々、為政者になる人は神に選ばれた人、という認識がある。
・何故に戦い続けるのか?
→やられたらやりかえすのも文化。実質より名誉を重んじる。それに元々砂漠の民だった彼らは
食べ物が無ければ最後は略奪してでも手に入れざるを得ない生活をしていた。その歴史も影響
していると、と。
・イスラムの世界は常に革新と保守がせめぎ合う=アコーデイオンを閉じたり、開いたりするのと
同じことが繰り返されている、と。
・全てはアッラーの思し召し、という考え方。故に前述したような他力本願的な思想が主流になるとも。
他にも、彼の地に住む人々の気質、処世術、思考等々を、一つ一つ-パイ皮をはぐように-解き
明かしていく一冊。中身は濃いですが、難しい話では無いので(エッセイ風にも読める)、先ずは
一冊読んでみようか、と思った方にお勧めです。 」
世界戦略情報みち編集部「●本書の本文冒頭(16~17頁)に大中小三枚の地図が載っている。著者佐々木氏の説明によれば、両頁にまたがる一番大きな地図は米国によるこれからの中東政策の要となる「ロードマップ」だという。現状(右頁下の中地図)と比べて、まず目につくのがイランの南東部とパキスタン西部を割いて登場している「バルチスタン国家」であろう。イラクは「クルド国家」「スンに国家」「シーア・アラブ国家」「バグダッド国際都市国家」の四つに分割されている。最大の産油国サウジアラビアの湾岸産油地帯が切り離され「シーア・アラブ国家」として誕生するというわけだ。「アメリカが描く新しい中東地図」との説明の付いたこの地図は、米軍退役将校ラルフ・ピーターズ大佐が2006年に「ブラッド・ボーダーズ」(血塗られた国境線)と題する論文を軍事専門誌『アームド・フォーシーズ・ジャーナル』に発表したときに付載され、「New Middle East Map」(新中東マップ)と名づけられたもの。
●この「新中東マップ」が登場してくる背景には米国の対中東政策の破綻がある。数次にわたる湾岸(イラク)戦争もアフガンにおける対テロ戦争も厖大な経費を費やしながら米国の国益を増大するどころか、米国の世界覇権そのものに対する疑問や批判を招く原因となっている。佐々木氏によれば、そこで米国は「新しい国境線を引かない限り、この民族・宗教紛争は落ち着きそうにない」と考えた。「地域の民族、宗教、宗派の分布状況をベースにして新たな国境線を引き、住み分けさせれば問題は解決され、紛争やテロはなくなる」(21頁)というのである。だが、米国による線引きを押し付けると、英仏の利害に基づく国境線を強要した現状線引きの二の舞になるだけだ。そこで、米国は対中東政策をハード路線からソフト路線へと転換することにした。つまり、「中東諸国で内乱を起こす、正確にいえば内乱を起こさせることにより、自らの手で新しい国境線を引かせる」という戦略である、と佐々木氏は言う。これがチュニジアのジャスミン革命に始まるアラブ諸国大変動の本質であるというのが、著者の分析である。
●ところで、米国の新中東政策のロードマップ「新中東地図」はかつて20世紀初頭までほぼ670年間にわたって中東を支配したオスマン帝国の地図とそっくりだと佐々木氏は指摘する。傲岸不遜で常に二枚舌を弄し、畳に土足で踏みこむ無礼に気づかない文明不在の米国が本当に「ソフト路線」を実行できるとは思えないが、佐々木氏によれば、そこで否でも応でもアラブ世界のかつての宗主国トルコの存在がますます重くなってくることになる。トルコは現在、70の国々とビザなし交流の関係を結び、それらの国々のインフラ整備や教育向上に多大の貢献を果しているが、これらの国々はかつてのオスマン帝国の版図とぴたりと重なる、と佐々木氏は言う。
●本書には「ツラン」という言葉は一言も出てこないが、ツラン民族の同胞として、また常に変わらぬトルコの友邦として、中東地域で日本の果すべき役割も、米国の使嗾に甘んじる域を脱しトルコとの同盟を主軸に据えるべき時代が来ていると思われる。 」