パレスチナ自治政府は国連に要請し、国家として国際的に承認を受ける、動きをしてきていた。その理由は、パレスチナ自治組織が国家として承認された場合、イスラエルとパレスチナ双方は国家間の交渉として、中東和平実現に向けて、動けるというものだった。
また、パレスチナ内部の反マハムード・アッバース派に言わせると『マハムード・アッバースはパレスチナ問題で何の成果も上げられなかったから、国連に国家承認をしてもらおうと思ったのだ。』ということになる。
実際に、パレスチナ自治組織が国家として国連の場で承認されたとしても、特別に状況が改善されるとは思えない。あくまでも、名目的な名誉だけであろう。例えばその政府が発行するパスポートを、どれだけの国が正式に受け付けるのか、あるいはそれを認めたとしても、ビザを簡単に発行してくれるのか否かは、話が別であろう。
イスラエルにとってはこのパレスチナ自治政府の動きが、邪魔でしょうがない。パレスチナに対する対応は大きな変化がなくとも、国際的に、イスラエルのパレスチナ対応に対する非難が、増える可能性が高いからだ。
イスラエルの頼みの綱はアメリカであろう。アメリカは来年大統領選挙を控えており、オバマ大統領はどうしてもユダヤ組織の支援を、受けなければなるまい。そうなると、オバマ大統領はイスラエル擁護に、国連安保理で拒否権を行使することになろう。
しかし、それはそうできても、必ずしもアメリカにとって、いい評判を生むことにはなるまい、そこでアメリカが使う次の手は、援助を減らすと言って、パレスチナ自治政府に圧力をかけ、国連での国家承認要請を断念させることだ。
パレスチナ自治政府が成り立っているのは、外国からの援助によってであり、そのまとめ役はアメリカだ。もしアメリカがこれを削減すると援助各国に呼びかければ、パレスチナ自治政府はたちまちにして、干上がってしまうだろう。
もちろん、それはマハムード・アッバース議長の政治生命を、断つことにもなる。そこでアメリカ政府は、9月に国連でこの問題が持ち出される前に、マハムード・アッバースを呼びつけたようだ。
その結果、マハムード・アッバース議長が国連に、パレスチナ国家承認の要請を取り下げれば、パレスチナ大衆は黙ってはいまい。一説には、パレスチナ自治政府は9月の、この提案が行われるに際し(行われない場合も同じ)軍や警察に特別警戒態勢を検討させ、パレスチナ大衆の暴発を、抑える準備を始めているということだ。パレスチナにも『アラブの春』が、影響するということであろうか。