いま湾岸諸国の中で、最も不安定な状況にあるバハレーンは、数々のサバイバル作戦を、展開している。しかし、そのほとんどは無駄に、終わるような気がしてならない。その理由は、バハレーン政府が進めるサバイバル作戦は、他力本願のものばかりだからだ。
最初にバハレーン政府が実施したサバイバル作戦は、サウジアラビアとアラブ首長国連邦に対し、スンニー派王家を守るために、軍隊を派遣してもらうことだった。つまり、自国民との対話ではなく、自国民の意志を、力によってねじ伏せようとしたのだ。
続いて実施したのが、資金作戦だった。これもサウジアラビアから、巨額の援助を受けてのものであり、バハレーンの財政をやりくりしてのものではなかった。もし、サウジアラビアがバハレーンに将来が無いと思えば、その瞬間に途絶えて、しまうものでしかないのだ。
その次のサバイバル作戦は、クウエイトのビドーン(無国籍者)に、バハレーンの国籍を与え、スンニー派人口を増やす作戦だった。この作戦は述べるまでも無く、クウエイト政府との協議の結果、進めたものであり、クウエイト側は自国から、ビドーンを追い出せるとして、積極的に協力したようだ。
バハレーン政府は多数派のシーア派国民よりも、クウエイトのビドーンに国籍を与え、優遇策を採るというのだから、基本的に間違った政策であることは、誰にも分かろう。
次なる一手は、パキスタンの複数の新聞に広告を出し、緊急に義勇軍を募る、というものだった。治安対策経験者や軍人経験者なら、誰でも応募できるというのだ。これは、自国のスンニー派国民が少ないことから、雇い兵でその穴を埋めよう、という作戦であろう。
最後の一手は、自国民の中の、公務員や軍人などに対する、給与大幅引き上げ作戦だった。なんとこれまでの給与に、その額の36・5~37・5パーセント上積みするというのだから、豪勢な話である。
そのための費用は、5億3千万ドルに達する、ということのようだ。その資金はバハレーン政府には無い。それは述べるまでも無く、サウジアラビア政府の援助によって、可能な話なのだ。
こうしてみると、今バハレーン政府がいかに、あせりを感じているかが分かろう。それだけバハレーン政府は不安定の度を、増しているということなのだ。同時に、この不安定なバハレーンに軍を派遣し、巨額の資金援助をするサウジアラビア政府も、将来に対する強い不安を、感じているということであろう。
バハレーン政府にもサウジアラビア政府にも、国民の不満を吸収する猶予は、まだ残っているのではないのか。冷静な対応が唯一、これらの国の将来の安定に、繋がると思うのだが。