最近になって、中東地域でのガスや石油パイプラインに対する、テロ攻撃が増加している。これは過去には全く無かったとは言わないが、極めて少ないものだった。つまり、ガスや石油の生産と輸出が、各国の生命線であることを、テロリスト側は知っていたが、手を出さないという不文律が、出来上がっていたのかもしれない。
しかし、最近では、イランのトルコに繋がるパイプラインが、攻撃されているし、イラクからシリアに抜ける石油のパイプラインも、攻撃されている。そして、エジプトのシナイ半島から、イスラエルやヨルダン、レバノン、シリアに通じるガスパイプラインについては、何度と無くテロ攻撃が、繰り返されている。
シナイのガスパイプラインに対するテロ攻撃は、過去に5回あり、今月(7月)だけでも、3度起こっている。このシナイのガスパイプラインに対するテロでは、テロリストが現場の担当者を避難させたあと、爆弾を設置し爆破するというものであり、極めて巧妙な攻撃になっている。
つまり、シナイのガスパイプラインに対するテロ攻撃は、あくまでもイスラエルに対するガス供給を止める、という政治的な意図が、明確になっているということだ。
イスラエルはエジプト(シナイ)が供給するガスで、電力をまかなっているが、その割合は40パーセントに達していることから、もしシナイからのガス供給に依存できなくなれば、大問題になろう。イスラエル政府内部では、既にシナイからのガスに依存しない場合の、対応策も検討し始めているようだ。
しかも、最近イスラエル国内では、住宅費の高騰に抗議するデモが拡大し、5万人もが参加し、政府の物価高騰に対する無策を、非難している。ネタニヤフ首相が電力やガソリン価格の引き下げ、主要な税の引き下げなどを検討しているが、実際には極めて困難なものとなろう。
加えて、アメリカの金融問題がイスラエルに対する援助を、削減させる可能性も否定できない。したがって、イスラエルは今後、非常に難しい局面に、向かって行くことになろう。
イスラエルはシナイのガス供給が、自国を狙ったテロだと感じているようだ。そのため、ヨルダンやシリア、レバノンに対するガス供給に、あまり問題が無いと語っている。しかし、ヨルダンの場合、シナイからのガスによる発電が、80パーセントにも達していることから、決して被害は軽微ではなかろう。
パイプラインに対するテロが増えていけば、それは湾岸の諸国でも似たようなことが起る可能性を、否定できないのではないか。その場合、イスラエルが現在直面している問題は、明日は日本の問題になる、ということではないか。