トルコの三軍のトップと総参謀長が、突然辞任を発表し、大きな衝撃をトルコ社会と、政界に与えたようだ。しかし、その衝撃は与党AKP(開発公正党)にとっては、決して悪いものではないようだ。
そもそも、今回三軍のトップが揃って、辞任すると宣言したのは、同僚の将軍が汚職その他の罪で、刑務所に入れられていることに、抗議してのものだった。つまり、汚職を始めとする犯罪を犯した仲間を、救うためのものであって、動機は決して大衆の支持を受けるような、性格のものではなかったのだ。
加えて、彼ら三軍のトップは、任期の終わりを来週の月曜日に、控えていたのだ。任期満了のたった数日前に、辞任をすることによって、与党に揺さぶりをかけることを、狙ったのであろうが、完全にその目論見は、外れてしまった、ということのようだ。
トルコのマスコミは、どの社も三軍のトップを支持していない、ということのようだ。それは当然であろう。汚職と犯罪にまみれた仲間を、釈放させることを目的にした今回の辞任劇を、支持する者はいまい。この一件で、トルコのマスコミはまともな判断をし、報道をしているということが分かろう。
結果的に、新たに総参謀長に就任が決まったのは、ネジデット・オゼル将軍だが、与党は彼を今までの総参謀長の後任の、総参謀長にしようと考えていたようだ。それは総参謀長が任期満了となる2年後だったが、今回の総参謀長辞任で、ネジデット・オゼル将軍は、2年早く総参謀長に就任することになった。
トルコの友人が『この辞任劇が起こることによって、トルコのAKP(開発公正党)体制は、より一層強化されたのだ。』と今回の辞任劇とその後について、解説してくれた。そうなると、この前の選挙結果もあり、今後、AKPは益々自信を持って国内外政策を、展開していくことになろう。
そのなかには、憲法改正とクルド問題の解決、第二ボスポラス海峡のような大規模プロジェクトの推進、などが含まれよう。もちろん、中東地域における外交、調整の主役になることも、忘れてはいまい。
一国の将来が希望の持てるものになるか否かは、リーダーの考えが正当であり、明確であることが、その基本的条件であろう。日本ではそのいずれもが、与野党共に不明確な状態に、あるのではないか。