リビアの反体制派の軍司令官、アブドルファッターハ・ユーニス氏が暗殺された、というニュースが伝わってきた。これは何を意味しているのか。今の段階では全てが不明だ。
不思議なことに、彼がどのような状況で暗殺されたのか、何処で暗殺が行われたのかも、明らかにされていない。その上遺体は未だに、見つかっていないというのだ。リビア反体制派のリーダーであるムスタファ・アブドッジャリール氏は、アブドルファッターハ・ユーニス氏の死亡については語ったものの、その詳細については、何も語っていないようだ。
アブドルファッターハ・ユーニス氏は他の二人と一緒に、殺害されたようだが、この暗殺をめぐっては、いろいろな憶測が飛んでいる。アブドルファッターハ・ユーニス氏は秘密裏に、カダフィ大佐とコンタクトを取っていた、という噂があり、反体制派の一部からは、信用されていなかったというのだ。
そのことが事実であるか否かは判らないが、この暗殺事件を機に、反体制派は弱体化していく、危険性があるのではないか。それは、アブドルファッターハ・ユーニス氏の出身の、オベイデイ部族がこの暗殺に、激怒したからだ。
もしかすると、アブドルファッターハ・ユーニス氏の暗殺で、反体制派の間に、部族間対立が発生し、反体制派内部での抗争が、始まるかもしれない。そうなれば、反カダフィの闘争は、一時的に、棚上げになるというよりも、分裂してしまうだろう。
以前に、欧米の中にはカダフィ体制を、叩けるだけ叩いて、欧米の意のままにしよう、という考えがあることを、ご紹介したが(NO・2040)、反体制派によるカダフィ体制打倒が、思いのほか進まないことに、欧米は業を煮やしたのかもしれない。
今の段階では何とも判断し難いが、今回のアブドルファッターハ・ユーニス氏の暗殺で、カダフィ体制は当分持ちこたえることに、なるかもしれない。その場合、イギリスとフランス、そしてイタリアは戦費がかさむため、大きな負担となろう。
それにしても、イギリスとフランスのカダフィ大佐に対する対応は、あせりすぎだったのではないか。第一に反体制派に出来るだけ早く、武力闘争に入るようそそのかしたことだ。そして、第二にはカダフィ大佐と彼の子息サイフルイスラーム氏、そしてアブドッラー・サヌーシー氏を国際司法裁判所で、有罪にしたことだ。
もし、カダフィ体制が今後も持ちこたえた場合、イギリスやフランスは、今後どうカダフィ体制と、関係していくのだろうか。アメリカも無人機を使っての、空爆に参加しているが、やはり今後のカダフィ体制との関係は、複雑になっていこう。そうしたなかで、比較的関係再開が容易であろう、と思われるのはトルコであろう。しかし、そのトルコもNATO諸国の圧力があってであろうが、反体制派を正式なリビアの代表として、認めている。今の段階では明確なことは分からないが、今後リビア問題は複雑さを増すことだけは、明らかであろう。