エジプトの革命以前から、エジプトのムスリム同胞団とアメリカとのコンタクトが、あったことが伝えられた。あるいは、アメリカはムスリム同胞団を、トルコの開発公正党(AKP)と同じように、穏健なイスラムの組織と誤解しているのではないか、という懸念を書いた。
エジプト革命から5カ月が過ぎた今、アメリカの共和党はムスリム同胞団に対する、懸念を口にし始めている。その語るところによれば、エジプトに対するM1アブラム戦車の、130億ドルにも上る輸出は、エジプトでムスリム同胞団が台頭してきている状況では、危険だというのだ。
アメリカの共和党の主張では、エジプトのムスリム同胞団とガザのハマースとの関係が、何処まで深いものなのか、ということであろう。実際に革命後、エジプト政府はガザに対する往来の緩和や、イラン艦船の紅海入りを、黙認している。
そうした中で、エジプトのムスリム同胞団が、どのような方向に向かうのかをめぐり、同組織内部で意見の対立が、顕著になってきているようだ。その内部対立は、決して簡単なものではなさそうだ。
まず、ムスリム同胞団のベテラン層と、青年層との意見の対立だ。青年層は今回の革命運動の中で、最初の段階から参加し、一定の役割を果たしてきたが、ベテラン層はこれに参加しない立場を、採ってきていた。
ベテラン層が革命広場(タハリール広場)に顔を出したのは、ほとんど革命が成就した段階であった。つまり、トンビのように横から、アブラゲをさらった形だった。その場で革命を起こした若者たちを押しのけて、得意げにスピーチをしたのは、世界的に有名なイスラム法学者の、カルダーウイ師だった。
こうした経緯から、今ムスリム同胞団のベテラン層と、青年層の間には、明確な立場の違いが、出来ているのだ。エジプトの大統領選挙に対しても、ベテラン層は議会の多数派を手にすれば、後はどうにでもなる、と考えているのであろうか。あるいは、権力への意欲がないように、カムフラージュする意図であろうか。
ムスリム同胞団のベテラン層は、大統領候補を立てないことを決めているが、これに対して反発し、大統領選挙に立候補すると言い出した、ベテラン層の一人、アブドルムナイム・アブルファットーフ氏がいる。当然のことながら、彼を支持する人たちが、ムスリム同胞団のベテラン層や、青年層の中にいよう。
そうなれば、ベテラン層は少なくとも、二つのグループに分裂するということになろう。同時に青年層も、ベテラン層と連帯するグループと、独自の新しい方針で、活動していくグループに分裂しよう。
鉄壁の結束を守り通してきたムスリム同胞団も、権力を目の前にして、心乱れたのであろうか。ムスリム同胞団は今後、少なくとも4つ以上のグループに分裂し、内紛を起こしていくのではないか。その結果、誰が得をし、誰が笑うのだろうか。