「サウジアラビア政府にあせりはないか」

2011年7月24日

 

 湾岸の一角にある島国バハレーンは、小国の中の小国であろう。外務省の資料によれば、東京23区と川崎市を合わせた面積(76平方キロメートル)に、124万人弱の人口が住んでいる国だ。

 その国で起こった反政府の動きに、不安を感じたサウジアラビアは、早い段階から自国軍を送り、安定化に努力している。コーズウエー橋によって繋がれている隣国が、不安定化することは自国の将来を、不安定化することに繋がる、と判断しての行動であったろう。

 しかし、どう考えても過剰な行動であったと思われるのだが、他国軍を入れてまで、力による弾圧をしたのでは、穏健な話し合いによる解決が、ほとんど望めなくなるからだ。

 その後、サウジアラビアは資金的な援助も、バハレーンに対して行っているが、それもあまり効果が出ていないようだ。力によって抑え込み、一時期は平穏を取り戻したバハレーンが、再度緊張状態を生み出し、バハレーン政府が呼びかけた平和会議には、反体制派の最有力組織である、ウィファークは参加を拒否している。

 つい最近になって、サウジアラビアはテロ対応のための、緊急法を定めた。それがいま、人権擁護委員会などから、非難を受けている。つまり、この緊急法は国民の自由な表現や、抗議行動を押さえ込むことになるというのだ。

 述べるまでも無く、この人権委員会の非難に対し、在英サウジアラビア大使館は、サウジアラビア国内で拡大しつつある、アルカーイダなど反政府テロ組織を、打倒するためのものだと説明し、人権委員会による非難は、何の正当な根拠も、無いとしている。

 しかし、最近ではインテリ層や女性、シーア派国民などがそれぞれに、政府に対し厳しい批判を主張し始めており、これらの動きを抑え込む上で、今回の緊急法が、適用される可能性があろう。

 サウジアラビアでは最近になって、秘密の地下組織がアルカーイダなどのテロ組織と連携し、反政府の行動を起こしている、という情報が流れている。そうなると、アルカーイダを始めとするテロ組織と、結びついているのではないか、ということを根拠に、民主化を求める活動を展開している人たちが、逮捕され、拷問を受ける可能性は、否定できまい。

 最近のサウジアラビアの動きには、何処かあせりを感じるのだが。あまりにも過剰と思われる行動や、決定が多過ぎるからだ。ヨルダンとモロッコをGCC(湾岸諸国会議)のメンバーにする動き、バハレーンへの対応はその典型といえよう。