多分、以前に書いていると思うが、サウジアラビアが石油ブームに沸く前後から、大学をたくさん設立した。そこで、その計画段階から関与していたのが、エジプト人学者たちだった。
彼らはナセル時代、弾圧から逃れてサウジアラビアに渡り、イスラム法学(シャリーア学)の教鞭を執っていた人たちだった。述べるまでも無い、彼らはムスリム同胞団のメンバーたちであり、しかも、強い政治的抵抗精神を、持った人たちだった。
サウジアラビア政府には、十分な学問的知識をもつ人たちが、少なかったことから、サウジアラビアのイスラム大学は、押しなべてこのムスリム同胞団メンバーの学者たちの、指導に従って大学を設立し、講義を進めることになった。
そのなかから出てきたのが、世界的に知られるイスラム原理の闘士、ウサーマ・ビン・ラーデンであり、彼と共にアフガニスタンで戦った、ムジャーヒデーン(聖戦の兵士)たちなのだ。
つまり、サウジアラビアにはエジプトの、ムスリム同胞団の学者たちの、感化を受けた人たちが、相当数いるということだ。ややもすれば、サウジアラビアはワハビー派の、原理主義の国家といわれるが、実はその影で、ムスリム同胞団のメンバーが、増加しているのではないかと思われる。
ムスリム同胞団とはその組織の発足当初から、極めて政治色の強い組織であり、単なるイスラム原理主義緒の団体ではない。しかも、彼らのメンバーはエジプトに始まり、シリア、ヨルダン、パレスチナなど、そしてリビアにも多数いるのだ。
サウジアラビアでも、最近、『アラブの春』の影響が出始め、インテリ層が政府批判の言動を、し始めているが、近い将来、サウジアラビアの隠れムスリム同胞団メンバーが一気に、政治的な活動を起こすのではないか、という懸念が今私の頭のなかで萌芽し始めている。
長い政治闘争の経験を持つムスリム同報団が、サウジアラビア政府を相手に、反政府の動きに出た場合、サウジアラビア政府には、その動きに対して、十分な対応能力が無いのではないか。