「どうするパレスチナ自治政府国家承認問題」

2011年7月20日

 

 パレスチナ自治政府が国連に対し、国家として認めてもらうよう、行動を起こして久しい。これまでに、この問題については、種々言われてきた。国連がパレスチナを国家として承認しても、何も変わらないという意見も、パレスチナ自治政府やその他のパレスチナ組織の、幹部の間では、少なくなかった。

 それにもかかわらず、パレスチナが国連に対して、国家として承認するよう求めるのは、あくまでも、マハムード・アッバース議長が彼の任期中に、何らかの歴史に残る成果を、挙げたいだけだという者もいた。

 あるいはもう少し体裁よく言うと、パレスチナが何の実質も伴わないまでも、国連によって国家として認められれば、それはイスラエル内部に、何らかの変化を生み出そう、という意見もある。

 パレスチナを国連に認めてもらうために、これまで外国にあるパレスチナ事務所(大使館)は、活発な外交活動を、展開してきていたようだ。その結果、100以上の国々が、パレスチナを国家として、認める意向を示している。その意味では、パレスチナ自治政府の勝利ということであろう。

 しかし、これにはまだハードルがある。国連安保理がどうこの問題を、取り扱うかだ。イスラエルを擁護し続けているアメリカは、当然拒否権を発動して、これを阻止するだろう。

 パレスチナ自治政府のマハムード・アッバース議長は、その場合は国連総会で認めてもらう、といきまいている。しかし、それが実現して国連総会で、パレスチナが国家として、認められたとしても、どんな意味があるのだろうか。

 ここに来て、パレスチナの国連による国家としての承認をめぐり、大きな問題がパレスチナ自治政府に、覆いかぶさり始めている。援助国の援助が、削減される危険性が、出てきたのだ。

 アメリカの議会外交委員会は、パレスチナ自治政府とレバノンに対する援助を、条件が満たされない場合、削減する方針のようだ。

 レバノンについては、ヘズブラのメンバーを政府機関から、一掃することが援助の条件のようだ。しかし、それは現在のレバノン国内の、政治バランスや力学から考えて、不可能であろう。不可能なことをアメリカは、レバノンに要求しているのだ。

 パレスチナ自治政府に対しても、イスラエルをユダヤ人の国家として認めることが、要求されている。しかし、イスラエルをユダヤ人の国家として認めるということは、イスラエル国内のパレスチナ人(イスラエル国籍を有する)の立場を、危険なものにするであろう。

加えてそのことは、イスラエルが出身地である、パレスチナ難民の帰還権を、放棄することを意味している。つまり、飲めない条件が、パレスチナ自治政府には、突きつけられているということだ。

他方、イスラエルは種々の条件を、パレスチナ自治政府に突きつけることによって、国際的な反発を、高めていくものと思われる。結果的には、玉虫色の立場を採っている方が、イスラエルにとっては安全だと思われるのだが、どうしてもそうは行かないのが、イスラエル国家の持つ硬直性かもしれない。

あるいはそれは、イスラエルの政治家や国民の持つ、特性かもしれない。いずれにしろ、事態はイスラエルにとってもパレスチナにとっても、悪い方に向かって進んでいるのではないか。