アラブ世界では、各種のテロ事件が起こってきたが、意外に少なかったのは、石油やガス施設に対するものだった。この施設へのテロ行為劇が、最も政府にダメージを与えると思うのだが、これまでそう多くは、発生してこなかった。
しかし、ここにきて、エジプトの、シナイ半島のガス・パイプラインに対する、テロ事件が4度も起き、その修復には時間がかかる、とエジプト政府が発表している。
エジプトのガス・パイプラインは、イスラエル向けであることから、明確な政治目的の、テロであろうことがうかがえる。そのパイプラインの修理に、時間がかかるというエジプト政府の発表には、事件の重要性を考慮してのものかもしれない。政治的テロである場合は、修理してもすぐまたやられる、可能性が高かろう。
エジプトの影響を受けたのであろうか、シリアのイラク国境に近い、北東部のデール・ゾウルの近くでも、石油パイプラインが爆発した。シリア政府は暑さによる爆発か、工事中で油が漏れ、それに引火した事故であろう、と原因を発表している。
しかし、他方では部族の反政府のテロだ、とする情報もある。一連の反政府デモの中で、複数の部族の若者が逮捕された部族が、政府に釈放を求めたが、それがかなわなかったことから、テロを実行すると脅しをかけていた、ということのようだ。この部族はイラクのアンバル県にも、同じ部族員がいる、大きな部族のようだ。
シリアの石油生産量は、38万バーレル程度と少ない。それだけに、こうしたパイプラインの事故が起こることは、シリア政府にとって、大きな痛手であろう。もし、推測のように、今回のパイプライン爆発が、事故ではなく、テロによるものであれば、今後大きく影響するものと思われる。
問題はこうしたケースが、一定の政治的効果を上げれば、他の国でも真似をするグループが出てくることが、考えられる点だ。そうなれば、小規模の産油国ばかりではなく、大規模産油国でも、起こりうるということになる。
中東の不安定化は、その意味で日本の不安定化と、直結しているということではないのか。