中東という地域は、戦争の種の尽きない場所のようだ。イスラエルとレバノンの海底に、ガス田があることが知られ、その開発が進むなかで、イスラエル・レバノン間の戦争が起きる、危険性が高まっている。
イスラエル側の語るところによれば、レバノン側が主張する領海は、イスラエルの領海に食い込んでおり、海底油田の自国領の範囲を、拡大するつもりだということのようだ。
しかし、イスラエルのこの主張を素直に受け入れるわけには、行かないのではないか。もちろん、レバノンンの主張もしかりだ。経済的に大きなメリットのある領海の設定を、両国が自国に都合のいいように、主張するのは当然のことであろう。
その場合考えられることは、国連の調停によって、領海の範囲を決定することであろう。しかし、イスラエルはこれまで、パレスチナの土地に非合法に、入植地を建設してきた経緯もあり、既成事実を作ったものが、勝ちだとする考え方が、強いのではないか。
その際、一日も早くガスを生産できる体制に、するということであろうが、現在、イスラエルは既に、アメリカのノーブル・エナジー社との間で、掘削を進めている。そうなると、アメリカ政府はイスラエルに有利な立場を、採る可能性が強くなろう。それは、自国企業の利益を守る、という立場からだ。
その結果、レバノン側はどんどん追い込まれ、自国の領海が狭められ、ガス資源の獲得は、不利になるということになる、可能性が高いのではないか。そのことをレバノン政府が、気が付かないはずはない。
結果的に、そこからどのようなことが想定されるかといえば、次のようなことではないか。レバノン政府としてはあくまでも、国連の場で正当な権利を主張しよう。
レバノンにはイスラエルに対して、戦争を仕掛けるだけの、軍事力も経済力もない。あくまでも、国際社会を味方につけて、自国の立場を有利にする、という方法だけであろう。
しかし、レバノンにはヘズブラが存在する。ヘズブラはイランの支援を受けて、イスラエルに対して軍事的に挑戦してくる、可能性があろう。そうしたことが想定されるからこそ、最近になってイスラエル軍機が、大挙してレバノン領空侵犯を、行っているのではないか。
つまり、イスラエル軍機によるレバノンの領空侵犯は、ヘズブラ側に攻撃を思いとどまらせるための、示威行為であろう。
現在レバノンのヘズブラには、2006年に起こったイスラエル・ヘズブラ戦争時よりも、保有する兵器の質がよくなり、しかも量が増えているといわれている。しかも、テルアビブまでも届く、飛距離の長いミサイルが、増えているということだ。
それが戦争の勃発によって、イスラエルの各地に飛んでくるようなことになるのであれば、イスラエルもそう簡単には戦争を、始められないのではないか。そうであるとすれば、イスラエル側もレバノンのヘズブラ側も、お互いにぎりぎりまで強気の振る舞いを、続けていくのではないか。しかし、それはちょっとした計算違いで、戦争に発展しかねない、危険なものであろう。