「日本にとっては冗談でもイランにとっては重大問題」

2011年7月 7日

 イスラム世界では、中学校ぐらいから男女別学が普通だ。国によっては小学校の段階から、別学になっている学校もある、性的な問題が起こることを、極力避けることに、その目的はある。

 しかし、大学になると先進的なイスラム諸国では、男女共学が多数派を占めている。つまり、大人としての見識があるから、問題は起こるまいということであろう。

 そうはいっても、大学生ぐらいが実は、大人として異性を求める傾向が、一番強いのかもしれない。この異性に対する規制を、どうするかということが、実はイスラム世界の政府にとっては、極めて重大な問題なのだ。

 男女の隔離をあまり厳しく実行すると、若者たちの間には不満がたまり、それが反政府運動を激化させる、危険性があるからだ。かつて、国民を堕落させてコントロールしやすくするには、『酒とセックスと映画』をはやらせるのがいいとされた。

 イスラム世界ではこの3つの条件の中で、可能なのは映画だけであろう。しかし、その映画も厳しい検閲を通過したモノのみ、ということになる。実はそれでは、さっぱり面白くないということになる。性的なシーンのある映画はもちろんだめで、暴力シーンについても、厳しいモラル規制がある。

気の抜けたサイダーのような映画を、見ても満足できないから、イランの場合はパアラボラアンテナを使った、外国のテレビや映画サービスを、見ることになる。ところが、一時期ゆるんでいたパラボラアンテナに対する規制が、最近強化され警察による没収が進められた。

そのことに加え、大学における男女別学が言い出され、各大学はその方向で動き出した。こんな事を実施しては、国内的に緊張を生む、と考えたのであろう。アハマド・ネジャド大統領が男女別学に、反対する立場を明らかにし、各大学にその旨通達した。

権力の当事者としては、当然の判断であったろう。ところが、大学側の反応はどうかというと、『男女別学を考えているわけではない。ただ講義室の中で男女学生が隣り合って座るのはまずいから、別々に座らせようと考えているのだ。』と返答している。

あるいは、男女別学はハメネイ師の側近たちによって、提案されたものではないか。それに対し若者の暴発を恐れたアハマド・ネジャド大統領が、反対したということではないか。

実はこの男女別学問題の裏には、ハメネイ師とその一派と、アハマド・ネジャド大統領とその一派との、見えない対立が影響を、与えているのではないかと思われる。