サウジアラビアの王女が、サウジアラビアもアラブ諸国の、変革の波をかぶる時が来る。出来るだけ早く、オープンに話し合いを始めるべきだ。それを放置すれば、収拾できない状態になる、という警告をしたのは、つい最近のことだった。
アラブではないが、イランも中東地域に位置することから、アラブの春の影響を受ける、例外ではあるまい。イランでもそろそろ、アラブの春の影響が、出始めているのかもしれない。それは、イランの最高指導者の発言からも、感じ取れる。ハメネイ師は最近になって、国内の意思統一が大事であることを、強調している。
そのことは、国民の間に分裂が起こり始めている、ということを表しているのであろう。実際に、イラン国内では国民の不満が、拡大しているものと思われる。それは、インフレによる物価の高騰、によるものであろう。
イラン政府の発表によれば、4月から5月にかけて、物価が14・2パーセント高騰したということだ。もちろん、その前の月にも物価は上がっているわけであり、14・2パーセントという物価上昇率は、今年1年間の物価上昇率ではないのだ。
このことの前には、大統領選挙をめぐり、イラン国内が政治的にも、大きく揺れた時期がある。その問題は今でも、イラン国民の間でくすぶっていよう。反対派国民はチャンスの到来を待っているのであって、体制変革を決して、あきらめているわけではあるまい。
サウジアラビアは石油収入を、国民にばら撒くことによって、不満を抑えているが、それと似たような手法を、アハマド・ネジャド大統領は行ってきている。直接的な貧民に対する、物資の支援などがそれだ。
しかし、そうした手法が有効に働くのは、期間に限度があろうし、支援にも一定の限界があるはずだ。その限界点を迎えたとき、インフレは猛烈な勢いでイラン国民の生活を、襲うことになろう。
つい最近、イラン政府は中央銀行に対して、インフレ率に関する報告書を、発表するなと指示した。それは、対ドルレートに影響を与えるし、金の価格がイラン通貨に対して、高騰する危険性があるからだ、と説明している。
つまり、そこまでイランのインフレは、危険水域に近づいている、ということであろう。政府発表のインフレ率14・2パーセントは、実際には20パーセントを、超えているのではないかと思われる。
こうした国内問題の存在を隠すために、ハメネイ師は国内の意思統一を呼びかけ、イラン革命を周辺諸国に広めることを、指示したのであろう。しかし、それは単なる時間稼ぎであって、問題の解決には程遠いのではないか。