世界で最も豊かな産油地帯である、湾岸諸国の石油が通過するのは、ペルシャ湾の出口ホルムズ海峡だ。このホルムズ海峡の安全なしには、世界が消費する石油の、40パーセントが供給されなくなることになる。
湾岸諸国の産出する石油の量が、世界全体でこれだけ多いということと、ホルムズ海峡を通過する石油の量が、それだけ多いということだ。当然のこととして、過去も現在も、ホルムズ海峡の安全航行が、世界の経済の首を握っている、ということになる。
そのため、イランは過去に何度となく、ホルムズ海峡の封鎖を、口にしてきたし、欧米諸国はその危険性を、指摘してきている.最近になって、イランはまたホルムズ海峡の封鎖を、検討課題から外したわけではない、と言い出している。
それは、アメリカとイスラエルが、イランの平和目的の核開発について、核兵器を製造することを、最終目的としている、と判断しているからだ。アメリカやイスラエルなかでもイスラエルは、現段階でイランの核施設を破壊しなければ、将来取り返しのつかない状態が、発生すると世界に警告している。
それは核兵器による攻撃(イランの場合は、核攻撃対象と想定されるのは、イスラエルということになる。)の恐怖と合わせ、イランに敵対しているサウジアラビアが、核兵器の保有を真剣に考え、次いでエジプトやトルコ、シリアといった国々も、核兵器を入手しよう、と考えるだろうということだ。
サウジアラビア政府はすでに、イランが核を持てば我々も持つ、と公言しているし、エジプトやトルコも検討しないではないだろう。
イランがホルムズ海峡封鎖の、可能性をほのめかし始めたのは、イスラエルによるイランの核施設への、攻撃を何としても阻止したいからであろう。イスラエルがイラクの米軍基地で、イラン攻撃の飛行訓練をしているという情報も、飛び交っているが、それはありうる話であろう。
アメリカが反対したとしても、イスラエルはイランの核兵器製造と、その完成後の、イスラエルに対する使用が、現実味を増してくれば、イランの核施設空爆を、断行するものと思われる。
多くの識者が予測しているように、それは両刃の剣であろう。イランの核施設破壊ができたとしても、世界はイスラエルを危険な国家として、認識するだろう。
また、ホロコースト神話が影を薄くしていくことにも、つながりかねない。パレスチナ問題は逆にこじれてしまい、収拾がつかなくなる可能性が、高いのではないか。二つのH (ホルムズとホロコースト)が、これからイスラエルを追い込んでいくのかもしれない。