あるアラブの国から、インテリの友人が日本を訪問した。ここでは、相手の立場もあろうから、敢えてあるアラブと表記し、彼の国が何処なのかについては、触れないことにする。時期が時期だけに、夕食をとりながら、アラブ各国の状況を聞くことにした。
彼はまずエジプトについて、今後は状況がより一層悪化するだろう、と予測した。つまり、エジプト経済は悪化し、貧困層が非常に苦しい状態に、陥っていく危険性がある。そうなれば、再度大衆は立ち上がり、政府に対して改善を、要求することになろうと語った。しかし、政府にも打つ手がないことも、事実だとも語った。
最近になって、ロシアや東欧の国々からの観光客が、少しずつ回復し始めており、黄海のリゾートには観光客の姿が、見られるようになった。観光産業が再活性化することが、当分の間の、唯一の希望ではないかと語っていた。
次いで話題はサウジアラビアに移った。私の側からは、すぐというわけではないが、ここ2~3年先には、サウジアラビアでも変革が起こるのではないか、と水を向けると、彼は、『サウジアラビアもアラブの他の国々で、起こっている変革の例外ではない。現在の段階では、サウジアラビア政府は資金力に物を言わせて、国民をなだめているが、国民の不満は経済面にだけあるわけではないから、近い将来は民主化要求が、国民の間から出てこよう。』という返事だった。
そのことに加え彼が語ったのは『ただ、サウジアラビアの青年層は、サウジアラビアが王国であることに、反対はしていない。彼らが求めるのは、民主的な政府であり、議会であり、首相が主導する政府だ。国王とそのファミリーが、全てを牛耳っている、今の統治システムは、受け入れない。』というものだった。
数日前には、サウジアラビアの王家の王妃の一人が、サウジアラビアも変革を進めなければならない。そうでなければ、将来は王制が不安定なものになる、という警告を発している。
彼女の場合は実名であり、外国の通信社に対しての発言だった。そのことは、彼女にとって極めて危険なことであった、と思われるのだが、そうした発言が王家の、しかも、女性から出てくるということは、サウジアラビアの王室内で取り交わされている不安の言葉が、どのレベルのものであるか、想像が付こうというものだ。
彼女に加え、赤い王子と呼ばれる王家の一員の人物もまた、王国政府に対して警告を発している。この王子の場合はもっと露骨で、『金は欲しいだけ手に入れたのだから、サウジアラビアから逃げ出せ、そうしないと斬首にあう時が来よう。』というものだった。サウジアラビア王家の、ゼロアワーに向かう時計は、既に動き出しているということだ。それが1年先か3年先か、あるいはもっと先であるかは別にしても、確実であることは間違いなかろう。