「イエメン反政府勢力サウジ非難を始める」

2011年7月 3日

 大統領官邸攻撃で負傷した、アリー・サーレハ・イエメン大統領は、6月3日以来、サウジアラビアの病院に収容され、治療を受けている。

彼の負傷(火傷)の度合いはひどく、何度となく帰国のニュースが流れたが、未だに実現していないし、イエメン・テレビのクルーがサウジアラビアで治療中の、アリー・サーレハ大統領のメッセージを、イエメン国内に向けて流す予定で、サウジアラビアを訪問したが、実現していない。

つまり、アリー・サーレハ大統領の負傷は、想像以上にひどいものだということが、これで証明されたということであろう。そうであれば、当然の帰結として、イエメン国内では政治的に大きな変化が、生まれるはずなのだが、未だにそれは起こっていない。

その理由は、アリー・サーレハ大統領不在の、イエメン現体制側に対する支援が、外部からあるからだということになろう。その支援国として浮上してくるの、はアメリカであり、第二にはサウジアラビアということになろう。

こうした判断は、イエメンの反体制派国民の間にも、持たれているようだ。最近になって、イエメンの反体制派側国民の間から、サウジアラビアに対する非難の声が、上がり始めている。

サウジアラビアはアラビア半島で、出来るだけ体制転覆が、起こらないようにという配慮から、イエメンの場合も、アリー・サーレハ大統領体制を、支援しているというのだ。つまり、イエメンの反体制派国民にすれば、イエメンの政治変革が、未だに達成されていないのは、サウジアラビア政府がイエメン政府に、資金を送っているからだ、ということであろう。

前に紹介したイエメン人ジャーナリストと話したとき、彼は『サウジアラビア政府がアリー・サーレハ大統領の帰国に反対しているのは、彼が十分に権力を担いうるまで、健康を回復した後に帰るべきだという配慮からだ。』と語っていた。つまり、サウジアラビア政府がアリー・サーレハ大統領の帰国に、反対しているのは、アリー・サーレハ政権の延命を、考えてのことだというのだ。

イエメンで始まったあからさまな、サウジアラビア政府に対する非難が、今後どうアラビア半島内で、影響していくのであろうか。イエメン一国内で済めばいいのだが、事はそうは行くまい。次第に他のアラビア半島の国々でも、そのことが取り上げられていくのではないか。

そもそも、サウジアラビアを非難する声が、イエメン国内で起こり始めているというニュースを、最初に流したのはイランだ。イランは述べるまでも無く、サウジアラビア軍のバハレーン介入について、反対している(バハレーンの国民の大半はイランと同じシーア派イスラム教徒)。

加えて、サウジアラビアで差別を受け、弾圧を受けているペルシャ湾岸沿いの、アルカティーフ地域の住民も、シーア派イスラム教徒だ。

そうなると、バハレーンの問題ばかりではなく、サウジアラビアのシーア派イスラム教徒に対して、イエメンのケースを例に出し、イランはサウジアラビア非難を、強めていく可能性があろう。

既にサウジアラビア国内では、文化人(スンニー派イスラム教徒国民)や女性の政府に対する批判(サウジアラビア女性に運転を認めさせる要求の、車を運転する形でのデモ)が起こり始めている。欧米のマスコミも、サウジアラビアで激増する、斬首刑非難の報道や、非民主的なサウジアラビアの政治批判を始めている。

最近では、インドネシア人メイド事件をめぐり、サウジアラビアに対する批判が、それに追い討ちをかけてもいる。ヨーロッパのサウジアラビア人外交官が、東南アジア出身のメイドに、長期間に渡って給料を支払っていないことも、ニュースとして流れている。

どうもサウジアラビア政府は、自国の体制を守ることにあせりを感じ、打つ手打つ手が逆効果を、生み出し始めているのではないか。バハレーンに対する派兵も同じで、決してサウジアラビアにとって、好都合な状況を生み出しては、いないのではないか。