中東世界がいま激しく揺れている。大衆蜂起から革命へ、あるいは内戦の継続、国内不安定化といった言葉が、何処の国にも見られる、状況にある。
そうした中では、連鎖反応が起こり、解決しうる問題が、解決できない方向に、向かうことがある。それを懸念して、大分前の段階で、リビアのカダフィ大佐による大衆蜂起への、力による対応を懸念した。
現実には、大衆の意向を力で抑え込もうとする動きが、リビアの例にならってか、アラブ各国で起こっている。イエメンの場合はまさにそれであろう。初期の段階で、リビアのカダフィ大佐とイエメンのアリー・サーレハ大統領は電話で、事態への対応を協議しているが、両者は力によって抑え込もう、ということで合意していたのではないだろうか。
シリアでも力による対応が中心であり、見せかけの政府による、反体制派へのアプローチはあるものの、問題の根本的解決につながる、動きではなさそうだ。バハレーンの場合も、サウジアラビアを始めとする湾岸諸国の、軍隊派遣を頼みに、力による対応を選択した。・
これまでのところ、力による対応は一定の成果を、生んでいるのかもしれない。リビア、イエメン、シリアの体制は、いまだに持ちこたえているからだ。ただし、この力による対応手法は、多くの国民を犠牲にする、ということでもあるのだ。
もう一つ見え隠れし始めた、悪の連鎖が中東地域にある。それは、核兵器開発の悪の連鎖だ。イランが平和利用目的と説明し、国際社会の反対を、無視している核開発が、やがてはイランに核兵器開発、核兵器保持につながるとして、イスラエルは以前から警戒し、警告を発し続けてきている。
イランが核兵器を開発し、それを最初に使用することになれば、そのターゲットになると予測されるのは、サウジアラビアであろう。イランとサウジアラビアとの関係は、最悪な状態にあるからだ。
最近になって、イスラエルハイランがここ1年以内に、最低でも1発の核兵器を、製造することになるだろう、という予測を発表した。イスラエルはイランが核兵器を手に入れる前に、何とかしてそれを阻止したいと考えている。
その情報の飛び交う中で、サウジアラビア政府は『もしイランが核兵器を製造することになるのであれば、自国も核兵器を所有することに、やぶさかでない。』という強硬な立場を明らかにしている。もちろん、サウジアラビアは完成品の核兵器を、金に糸目をつけず買うということであろう。そうなると他のアラブの国々も、それに続くのではないか。この悪の連鎖を止める英知は、存在しないのか。