「エジプト議会選挙遅延の可能性大」

2011年6月20日


 大衆革命によって、ムバーラク政権が打倒されると、その次は公正で民主的な選挙がおこなわれ、エジプトの社会は政治も体制も生まれ変わる、という夢があった。しかし、それは夢でしかないようだ。

 革命がいつの間にか、軍のクーデターに取って変わり、表面的には大衆による革命と思わせられているが、革命の後で実権を握ったのは軍部だった。それが何より証拠には、現在、エジプトで最高の権限を握っているのは、タンターウイ国防大臣であり、彼が指揮する軍最高評議会だ。

 その大衆と軍との隙間で、あたかも自分たちが主役のように、はしゃぎまわっているのが、ムスリム同胞団であろう。彼らは9月に予定されている選挙では、議席の相当数を確保できる、とほくそ笑んでいる。

 しかし、それには障壁がある。憲法改正前に選挙を実施するか、あるいは憲法改正後に選を実施するか、ということだ。現段階で、選挙をやればムスリム同胞団は、古くからある組織であり、絶対的に有利だが、憲法が改正されるまでには時間がかかり、その後には、新たな民主的な各グループが、しっかりした政党を、結成していることであろう。

 今回の革命の主役だった民主化各グループは、憲法を改正した後の選挙を、要求しているし、ムスリム同胞団は憲法改正前、つまり一日でも早く、選挙が実施されることが、自派にとって有利だと踏んでいる。

 そうしたなかで,イッサーム・シャラフ首相が憲法改正後に、選挙をすべきだと言い出している。つまり、予定されていた9月選挙は見送りたい、ということのようだ。それは軍部の意向でもあろう。軍は世俗的な組織であり、本音ではムスリム同胞団の大幅な台頭、は許したくないだろう。

軍最高評議会も大衆の声として、あくまでも憲法優先を打ち出す、それを首相が発言したということであろう。こうしたなかで、ムスリム同胞団はどのような手を打ってくるのか。ムスリム同胞団は暴力的側面も、持った組織であることを考えると、今後、エジプト国内では、テロが増えるかもしれない。