「トルコは難民対応でシリアに軍事進攻も」

2011年6月17日

 シリア北部の住民が、シリア軍の攻撃を恐れ、トルコの南東部地域に、続々となだれ込んできている。その数は、既に5000人にも、達しようとしている。しかも、それ以外に1万人以上のシリア人が、トルコに難民として逃れることを、待ち望んでいるということだ。

 このシリア難民で、トルコはどう対応すべきか、真剣に悩んでいる。

第一に、トルコはシリアとの間で、ビザなし交流を合意しているため、シリアの難民がトルコ側に入ってくることを、阻止できない状態にある。

第二に、トルコに難民として逃れてくる人たちの多くが、クルド人であること。

第三に、シリア難民問題がトルコの国内問題に、発展する危険性があること。

 トルコはこのシリアからの難民流入で、せっかく合意したビザなし交流を、止めるわけにはいかない。そうすれば、他の国々とのビザなし交流にも、影響が出てくるし、トルコの信用にかかわることになる。

 トルコ政府は善隣友好を旗頭にしており、かつ、人道を旗頭にしているため、難民の流入を阻止するわけにはいくまい。しかし、シリア難民の数が増大していけば、彼らに対する支援に要する資金は、莫大なものとなろう。

 シリアからの難民の多くは、シリア北部の地域から逃れてくる人たちで、その多くは国籍も旅券も所持しない、クルド人であろう。彼らはトルコ南東部にいるクルド人を頼って、流入していることも考えられる。

 もし、トルコ政府がこの問題を放置すれば、トルコのクルド人がシリア難民への、人道的対応を求めて、騒乱を起こす危険性がある。あるいは将来的には、シリアから逃れたクルド人が、トルコのクルド人の支援を受けて、国籍を取得する動きに、出る可能性もあろう。そうなると、トルコ国内のクルド人の人口は増大し、ますますクルド問題への対応が、困難なものとなろう。

 こうした種々の懸念から、シリアで反政府運動が起こり、難民がシリアからトルコに流入し始めた早い段階で、トルコ政府はシリア国内に軍を送り、一定の地域にシリア軍から住民を守るための、逃避地を造ろうという計画があたっと、一部のジャーナリストは報じている。

 その場合、当然ことながら、シリア軍とトルコ軍の武力衝突が、起こる可能性があるということであり、容易なことではあるまい。同時に、こうしたことが起こった場合、トルコ軍は難民保護の名目で、長期的にシリア領土内に駐留することとなり、結果的に、そのシリア難民の逃避地がトルコ領土内に、組み込まれることにもなりかねない。中東の国境はここでも変更の可能性がある、ということではないか。