多くのアラブの国々の体制が不安定から、転覆の危険にさらされている。そうしたなかで、サウジアラビアは持てる資金を使い、友好国を支援している。バハレーンには膨大な資金援助をしただけではなく、軍隊までも派遣している。ヨルダンにも巨額の資金援助が、行われたと報じられている。
その効果が果たして、どう出るのかについては、まだ分からないが、物の流れは金では、変えられないのではないかと思われる。大衆の不満が爆発し始めると、それはなかなか止められないのではないか。
バハレーンでは、一旦おさまったかに見えた、大衆の反政府の動きが、再発しているし、ヨルダンでも抗議行動の規模が、大きくなってきているようだ。
そうした周辺諸国の動きのなかで、サウジアラビアからも『アラブの春』に通じるのではないか、と思われる動きが伝えられている。民主化要求デモが首都のリヤド市であり、女性が車を運転して逮捕される、というニュースが伝えられた。
それに刺激された女性が複数で、車を運転して逮捕されている。これは述べるまでも無く、女性が車の運転の自由を求めた、政府に対する抗議の行動だ。シーア派の多いアルカテーフの街では、デモが続いているようだ。
そうした大衆の不満を、表明する動きのなかで、気になるニュースが伝えられている。それは、サウジアラビアで斬首刑が、今年に入り、激増しているというニュースだ。このニュースはインターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙の、ブログが伝えたものだが、今年に入り、サウジアラビアでは既に、27人が斬首刑に処せられた、ということだ。
この27人という数は、昨年1年間に処刑された人数と、同じだというのだ。単純計算すると、今年は去年の倍の斬首刑が、執行されることになる、ということではないか。
実は斬首刑の判決を下されている者が、まだ100人いるということだ。そのほとんどは外国人であり、十分な取り調べも、公正な裁判も行われずに、斬首刑が決定したのではないか、と思えてならない。
このニュースを報じたインターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙も、同様の懸念を抱いているのではないかと思われる。そのことに加え、この斬首刑の増加は、取り締まる側、裁く側の、不満が影響しているのではないか、と思えるのだが。
次々とサウジアラビア国内で起こる、民主化の動きに対し、治安当局は精神的に、疲労しているのではないか。
あくまでも然るべき犯罪が行われ、それが一定のレベルを超えるものであれば、死刑はサウジアラビアの法律では、正当なのかもしれないが、そうでないとすれば悲劇であろう。いずれにしろ、刀で人の首を撥ねるという処刑の仕方は、残酷過ぎると思えるのだが。