「シリアの内紛と国境沿いの都市」

2011年6月 9日

 アラブや世界の記事を読んでいると、いろいろな見解に突きあたるし、面白いものにも出会う。また日本人とは全く別の、発想に出会ったりする。

 シリアの内紛について、興味深い切り口の記事が、インターナショナル・ヘラルド・トリビューンのブログに載っていたので、その一部をご紹介しよう。 シリアの北辺の街、トルコの国境に近いジスル・アッシュグ―ル市は、もともと反政府のムスリム同胞団の、メンバーが多いところだった。つまり、反政府の機運は、以前からあったということだ。

 このジスル・アッシュグ―ル市では、いま二つの戦闘が起こっている。一つは住民と軍との戦闘であり、もう一つは軍と反政府に回った軍人との戦いだ。この点については、正確な情報は伝わってきていないが、トルコに逃亡した難民たちの話からすると、そういうことのようだ。

 反政府側に回った軍人たちは、ジスル・アッシュグ―ル市とその住民たちを守ろうとしている。そうはいっても、反政府側に回った軍人の数は、政府側の軍人よりも数が少なく、不利な戦いを強いられているということだ。

 そのため、反政府側に回った軍人たちが、多数殺害されているのだ。この軍人同士の戦闘は、反政府デモが起こり始めた、当初の段階からあったようだ。

 土地の住民と軍との戦闘について言えば、住民たちは近隣諸国から武器を密輸し、抵抗を行っているということだ。もともと、密輸を行っている国境沿いの部族は、重装備されていたようだ。そのために、武力闘争が可能だ、ということであろう。

 シリアの場合、住民によるデモが、武力闘争に変化しているのは、国境に近い都市が多いようだ。例えば、最初に反政府デモが起こったデラア市は、ヨルダンの国境に近い街であり、バニヤースはレバノン国境に近い海岸都市だ。

 それだけに、国境に近い都市の反抗に対して、政府が間違った対応をすると、単なる暴動やデモではなく、その都市が国家から分離し、隣国(その都市と国境を接する国)に加わる、危険性があるということだ。

 住民の反政府デモに対する、対応を違えたことで、結果的に領土の一部を、失うことにもなりかねない、ということだ。アラブの各国には、隣国と国境をまたいで生活する、同じ部族や、ファミリーが沢山いるために、その危険性があるのだ。