長期にわたって続いている、イエメンの内戦の中で、ついに、アリー・サーレハ大統領が重傷を負い、サウジアラビアに治療のために移動した。一説によると、彼の怪我は全身の40パーセントにも及ぶ火傷と、爆発物の破片が心臓の近くや喉などに、突き刺さっているとのことだ。
一部のマスコミの報じるところによれば、身体のどの部分かは分からないが、、火傷で炭化しているところも、あるということだ。それにもかかわらず、アリー・サーレハ大統領は近日中に、イエメンに戻るという声明を、発表している。
もちろん、こうした状態で帰国するとなれば、相当の危険を伴うことになろう。そのためアメリカも、彼を受け入れているサウジアラビア政府も、アリー・サーレハ大統領のイエメンへの、帰国に反対している。
イエメン国内では、アリー・サーレハ大統領を帰国させない、と反政府勢力のメンバーたちが叫び、相当数のイエメンの都市が、反政府の勢力によって、制圧されているということのようだ。
リビアではカダフィ大佐が生死にかかわらず、最後までリビア国内にとどまる、という声明を、音声だけで伝えている。彼の場合は、子息のサイフ・ル・アラブ氏が戦闘の中で死亡しているが、それ以外の子息たちについては、何も報じられていない。あるいは負傷し、あるいは死亡しているかもしれない。
シリアのバッシャール・アサド大統領は、反体制派の立てこもる都市を、片端から徹底的に、弾圧していく方針のようだ。その強硬路線は、彼の弟マーヘル・アサド氏が指揮をとっているようだ。
エジプトのムバーラク元大統領については、彼自身が拘束され、病状の回復と同時に、裁判にかけられることになっているし、彼の子息アラーア氏とガマール氏は、既に取り調べが進められている。
こうして見ると、一時期、栄耀栄華を極めたアラブの国家元首たちは、いま軒並みに、苦境に立たされているということだ。いま、彼らの胸中にあるのは何であろうか。
この期に及んで、彼らが徹底的に戦おうとするのは何故であろうか。日本の武将たちは、自分の運気が途絶えた時、潔く死んでいった。イスラム教では自殺は認められていないので、自殺を図ることは無いにしても、降伏する手立ては、残されているし、国外逃亡の道もある。
アラブの国家元首たちの今の姿は、何やら祇園精舎を思わせる、情景ではないか。