先週の金曜日に、ヨルダンの首都アンマン市と、その他の都市で、反イスラエル・デモが行われた。首都アンマンのデモには、3000人が参加した、と報告されている。
デモ参加者は青年層(5月15日運動)に加え、国会議員、貿易組合のメンバーなどだった。彼らは『イスラエルとの、あらゆる合意を破棄しろと叫び、キャンプ・デービッド合意やオスロ合意も、破棄すべきだ。』と叫んだ。
加えて、ヨルダンの首都アンマン市にある、『イスラエル大使館を閉鎖しろ。』『イスラエルとは断行しろ。』とも主張している。加えて『ヨルダン在住のパレスチナ難民には父祖の地に帰る権利がある。』と主張した。
ヨルダンの大衆は、パレスチナの解放を望んでいる、パレスチナとヨルダンの人々はひとつだ、とも叫んだ。
このデモでは、『バキト内閣が即時に解散すべきである。』と主張し、バキト内閣の汚職、政治・経済政策の失敗などを非難し、バキト内閣には改革の意思が、無いとも非難した。
さて、このヨルダンで起こったデモについて考えると、デモに参加したのはほとんど全てが、パレスチナ系ヨルダン人であろうと思われる。
以前には、ヨルダンの本来の国民である、ベドウインの部族長団体が、アブドッラー国王に対し、『ラニア王妃は浪費しすぎだ。』ということと、『政府が収用した土地の補償がなされていない。』ことについて抗議している。
この二つの出来事を考えるとき、ヨルダンのベドウイン部族長たちの非難の対象は、ラニア王妃であり、今回の抗議デモでは、イスラエルと、バキト首相そして彼の内閣が、非難の対象とされている。
しかし、二つのデモの本当の目的は、アブドッラー王制に対する非難なのだ。アブドッラー国王に対して、直接非難を加えることは、ヨルダンの憲法によれば反逆罪であり、死刑も覚悟しなければならないということだ。
そのため、アブドッラー国王への非難は、首相やラニア王妃非難で、カムフラージュされているのだ。つまり、現在のヨルダンの情勢は、極めて危険な状態になりつつある、ということであろう。
間接的なアブドッラー国王に対する非難は、ハムザ王子を皇太子の地位から外したことに対する、抗議でも現れている。アラビア語の演説の下手な、アブドッラー国王に対し、ヨルダンのベドウインたちは、我慢できない部分があるようだ。ましてや、アブドッラー国王には彼の父、故フセイン国王の様に、ベドウイン訛りのアラビア語を、話せるとは思えないし、理解できるとも思えない。
そのことが、今後のアブドッラー国王の運命を、決定的に左右することになるかもしれない。アラブは言霊の世界なのだから。