ダウトール外相とエルドアン首相の活躍で、トルコ外交が破竹の勢いで、成果を挙げてきている。結果的に、トルコは周辺70カ国との、ビザなし交流が出来るようになった。
そのことは、トルコのビジネスマンがこれらの国々で、自由にビジネスを展開できるようになったということだ。トルコの周辺諸国、例えば中央アジア諸国を訪ねると、小模店舗から大規模なスーパーまで、トルコ人の経営する店舗が目立つ、それはイラクのエルビルでも同じだ。エジプトの免税店では、トルコ製品が売られているし、カイロ市内にもトルコのブテイックが目立つ。
トルコの進出は、シリアでも進んでいるのだ。しかし、ここにきて気なる情報が流れ始めている。それは、シリア国内の不安定化が遠因と思われる。サウジアラビアのクオリテイ紙、シャルクルアウサト紙が『トルコとシリアのハネムーンは終わった』という記事を掲載している。
その記事によれば、トルコとシリアは関係改善が始まって以来、国境の地雷撤去が行われ、貿易が自由化され、合同軍事演習まで行われるようになっていた。両国は類似する民族を抱え込み、800キロの国境を共有している。
シリアがトルコと関係を強化したことは、シリアの国際的信用を高め、イランとのバランスを取る上でも役立つ。シリアはトルコの頭痛の種であったPKKのリーダー、アブドッラー・オジャラン氏を間接的にトルコ側に引き渡したことが、そもそもの関係改善の始まりだった。
しかし、シリアの内紛が始まって以来、シリアからトルコに難民ガ流入し始め、これを懸念するトルコは、シリア領土内に安全地帯を設置し、そこに難民を留めておきたいようだ。そのことは、トルコがシリアに内政干渉することにもつながり、両国関係に問題が生じ始めている。
これまで、トルコのエルドアン首相は何度となく、シリアのアサド大統領に民主化推進の、アドバイスをしてきたが、なかなか進展していないことに、苛立っていたようだ。シリア国内が不安定になることは、クルド問題など共通の問題が多いことから、トルコに飛び火する危険性があるため、他人事ではないのだろう。
シリア側からすれば、トルコとシリア国内のムスリム同胞団との関係が、良好であることから、シリアの反政府運動を、トルコが間接的に支援しているのではないか、トルコ軍は自国の安全のために、越境し軍事攻撃をかけてくるのではないか、という不安があるようだ。そのシリアの懸念を高めるような発言が、トルコのギュル大統領特別顧問の、アルシャド・フルムズリ氏の口から出ている『トルコとシリアの関係は、体制同士の関係ではなく、国民同士の関係だ。』というのだ。
レバノンのマシュヌーク議員は『トルコの選挙が終わった段階で、トルコ政府はアサド大統領に対し、辞任すべきだと言い出すのではないか?』と予測している。
トルコのダブトール外相は最近になって『シリアのアサド大統領は民主的な選挙を、早急に実施すべきだ。』とシリアにアドバイスしている。トルコとシリアの関係は、中東地域にとって非常に重要なものであるだけに、今後の成り行きが気にかかる。