大分長く続いたイエメン内紛も、そろそろ終わりのときが、近づいてきているようだ。最近になって、イエメンの首都サナア市での、戦闘が激化したことが、その大きな兆候であろう。
金曜日には、サナア市だけで戦闘の死亡者は、100人を超えたと報告されている。これでは、誰もアリー・アブドッラー・サーレハ大統領を、支持する者はいなくなるだろう。
イエメン国民はアリー・アブドッラー・サーレハ大統領に代わる、誰かが出てきて、一日も早く流血の惨事を止めてほしい、と願っていることだろう。サナアの激戦で、首都を逃れる者が多数出ているということも、最近では報告されている。
そうしたなかで登場してきたのが、イエメンきっての大部族、ハシド部族の族長のシェイク・サーデク・アルアフマル氏だ。彼がもし、アリー・アブドッラー・サーレハ大統領に代わって、イエメンの新しい大統領に就任するのであれば、湾岸諸国はこぞって彼を、支持するのではないか。
それは、アリー・アブドッラー・サーレハ大統領が、湾岸諸国の仲裁を、全く受け付けなかったからだ。もし、アリー・アブドッラー・サーレハ大統領が、湾岸諸国の仲裁を受け付けていれば、イエメン大統領の座を降りても、亡命先に事欠かなかったろうし、その後の豊かな生活も保証されたはずだ。
しかし、今となっては、アリー・アブドッラー・サーレハ大統領が、アルカーイダの脅威を持ち出しても、アメリカは見向きもしないだろうし、湾岸諸国も亡命を申し出ても、受け付けない可能性があろう。
アリー・アブドッラー・サーレハ大統領が、間違った判断を下し、自身の立場を弱めたのは、彼の面子だったのか、あるいは彼の物質的な欲望だったのか。彼以外には真実は分かるまい。
いずれの理由であるにしろ、イエメン国民はあまりにも、多くの血を流しすぎた。その上また部族長が大統領に就任するのでは、アリー・アブドッラー・サーレハ大統領の統治の形と、そう変わらないのではないか。少なくとも、欧米が考える民主主義とは、程遠い体制が出来上がるであろうと思われる。
欧米型民主主義の実現は、まだほとんどのアラブの国では、無理なのかもしれない。そうであるとすれば、当分の間アラブ世界で実行可能な、欧米型民主主義に代わる、アラブ的民主主義か、あるいは擬似の欧米型民主主義の、体制を考える必要があるのかもしれない。